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演題詳細

P-114:
深海熱水活動域からの多様な好気性メタン酸化細菌の集積培養と単離
○平山 仙子, 阿部 真理子, 高木 善弘, 田中 圭子, 津田 美和子, 西 真郎, 宮崎 淳一, 山本 啓之, 高井 研 海洋研究開発機構 hirayamah@jamstec.go.jp
海洋にはメタン湧出を伴う活動域が多数存在するが、海水中に拡散するメタンを代謝する生物は専ら好気性メタン酸化細菌であると考えられ、それらの活動は環境保全や物質循環において重要な機能を持つと認識されている。海洋の主要な好気性メタン酸化細菌はGammaproteobacteriaMethylococcales目に属するが、培養報告例は非常に少ないため、その生理学的知見は乏しい。一方、海洋試料の遺伝子解析からは、科や属レベルで新奇且つ多様な好気性メタン酸化細菌の存在が示唆されている。本研究室では培養に適した海洋試料を入手した際には好気性メタン酸化細菌の培養を試みているが、これまで深海熱水活動域の試料から培養に成功したことはなかった。しかし今回、沖縄トラフ深海熱水活動域の試料から初めて好気性メタン酸化細菌を集積培養し、また一部を単離したので報告する。
 沖縄トラフ伊平屋北熱水活動域(水深約1,000 m)には、好気性メタン酸化細菌を共生させている甲殻類ゴエモンコシオリエビや二枚貝シンカイヒバリガイ類が生息している。これら深海生物の群集はメタン湧出地点を示す目印となる。そこでこれらの群集近傍4カ所に約2ヶ月間、現場微生物捕集器(in situ colonization system; ISCS)を設置した。回収後、ISCSを接種源として、3つの温度帯で好気性メタン酸化細菌を標的とした連続培養を開始した。現在3つの温度帯で、複数のMethylococcales目細菌を含む集積培養系を維持している。培養装置内に形成された微生物マットの群集構造解析からは、群集全体の10-20%がMethylococcales目細菌であるとの結果を得ている。集積培養系からの好気性メタン酸化細菌の単離は、微生物マットを接種源として随時試みており、現在までにMethylothermaceaeMethylomarinovum属の新種に相当する株を単離した。Methylomarinovum属については現在のところ、浅海の熱水活動域(水深23 m)より単離されたM. caldicuralii 1種1株が報告されているのみであるが、本研究により深海熱水活動域にも生息することが明らかとなった。
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