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演題詳細

P-215:
水稲種子に共生する窒素固定細菌の動態と窒素固定能に関する研究
○蓑田 尚人1, 池永 誠2, 川内 智裕3, 小野 祥子1, 境 雅夫2 1鹿児島大・農, 2鹿児島大・学術研究院農, 3鹿児島大院・連合農
 植物の種子に共生する細菌は、植物の生育にとって重要な役割を持つと考えられており、種子を介した次世代への継代が指摘されている。このため、微生物資材として有用な細菌を探索する上で、種子や幼苗は有効なホットスポットと考えられる。我々のグループは、これまで籾殻を取り除き表面殺菌した水稲種子を無菌的に幼苗まで栽培し、水稲種子に共生する細菌の群集構造と動態について解析してきた。その結果、植物個体が異なっても同じ部位には類似する群集構造が形成され、個体の違いよりも部位の違いで群集構造が異なる事、さらに移行先の葉や根では、窒素固定細菌の存在比が増加する事を明らかにしてきた。しかしながら、種子及び幼苗の葉と根における窒素固定活性の有無、窒素固定細菌の細菌数の変化については未だ明らかにされていない。そこで本研究では、窒素固定活性及び窒素固定細菌の細菌数に着目し、その関連性について検討を試みた。実験方法:水稲種子の籾殻を取り除き、種子表面の洗浄・殺菌を行った。MS液体培地とバーミキュライトを支持物として加えたプラントボックスに種子を植え付け、人工気象器内で無菌的に幼苗まで約3週間栽培した。幼苗の葉と根を採取し、同じ部位を数個体混ぜ合わせて磨砕した懸濁液と、個体毎に各部位を磨砕した懸濁液を調整した。籾殻を取り除き表面殺菌した種子の懸濁液も同様に調整した。数個体混ぜ合わせて調整した各部位の懸濁液を、SMM-N軟寒天培地が入った試験管に接種・培養し、2週間後にARAを測定した。一方、個体別に調整した各部位の懸濁液は、段階希釈後、希釈液をSMM-N寒天培地に塗抹・培養した。2週間後にコロニーカウントを行い、個体間及び部位間でコロニー数を比較した。結果考察:種子及び幼苗の葉・根試料のARAを測定した結果、種子ではARAは検出されなかったものの、葉と根で強いARAが検出された。他方、コロニー数の差異に着目すると、植物個体が違っても部位が同じの場合、コロニー数は同程度で、個体の違いよりもむしろ部位の違いでコロニー数は大きく異なり、葉は種子に比べて数百倍程度、根は数千倍程度多かった。以上の結果より、葉と根の窒素固定細菌は元々種子由来であるが、種子ではその数も少なくARAも検出限界以下であった事、また、幼苗の生育過程で葉と根に移行・増加し、窒素固定を通して幼苗生育に関与していたのではないかと推測された。
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