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演題詳細

S1-1:
ホモ・サピエンスが創りだした新しい世界と環境
○川幡 穂高 東大・大気海洋研 kawahata@aori.u-tokyo.ac.jp
 ホモ・サピエンスの最初の先祖はエチオピアの大地に約20万年前の間氷期に誕生しました.約8-6万年前にアラビア半島にわたり,全世界に拡散しました.私達の研究によると急激に湿潤化したため,「対岸に美味しい食糧があるだろう!!」と期待したものと考えられます.現代人の胃に棲むピロリ菌のDNAの系統分析結果もこの時期を示唆しています.彼らの一部が日本に約3.8万年前にやって来ました. 世界最古の土器は,日本の縄文土器(青森県の大平山元I遺跡)で1.65万年前のものでした,私達の研究によると,当時の夏の気温は現在より7℃も低く,根室の環境に相当します.濃霧で陸源食糧に恵まれず,海産物に頼り「海鮮鍋」を食べていたはずです.縄文土器に付着した有機物の精密分析の結果と整合的です.土器の発明は「殺菌」+「食糧確保」で革命的な生活環境の改善をもたらしました. 日本の人口は,縄文初期に2万人,中期に27万人,晩期8万人でしたが,三内丸山遺跡もこのトレンドを反映し,温暖な中期に相当する5900-4200年前に栄えました.私達の研究によると,2.0度の急激な降温,緯度方向で300kmに相当する大きな変化が起こりました.陸の動植物の生態系は変化し,たぶん食糧難が原因で人々は散逸したと推定されます. 日本の西日本の夏の気温を誤差0.3度で復元しました.最高最低の温度差は2.1度で,最高温度は平安時代初期の820ADでした.寒冷期は,日本社会の大きな変化期と一致していました:縄文社会/弥生社会,古墳/古代天皇公家社会,古代天皇公家/武家社会,武家/近代社会の境界に対応します.近年,人間の活動の影響で,地球環境問題が起こりました.自然が経験した速度のほぼ100-10万倍で変化しています.エコな社会が望まれています. ホモ・サピエンスは「賢い人間」という意味で,頭を使うことに特徴がありますが,多大なエネルギーを必要とします.そこで,人間はエコではありません.極言すると「エコ」は「アホ」に通じます.この能力は化学反応的には酸素呼吸の賜物ですが,酸素は体にとり劇薬です.熱力学的には1気圧で25度なら,私達の体は二酸化炭素と水が安定です.私の生きている間に,地球外の惑星で微生物の発見がなされると確信しますが,ホモ・サピエンスに相当する生物の存在は,この宇宙で非常に限られると考えられます.なぜなら宇宙はとても「静か」だからです.
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