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演題詳細

P-010:
亜酸化窒素還元に寄与する脱窒細菌の亜酸化窒素と酸素を巡るダイナミクスの動力学的評価
○末永 俊和1, 堀 知行2, 利谷 翔平1, 細見 正明1, 寺田 昭彦1 1東京農工大・院工, 2産総研 s150581w@st.go.tuat.ac.jp
 亜酸化窒素(通称:N2O)は21世紀最大のオゾン層破壊物質であり、強力な地球温暖化物質として注目されている。N2OをN2に還元する経路は脱窒反応の最終段階であるN2O還元反応のみと言われており、この反応を担うN2O還元細菌を利用したN2O放出抑制技術への応用が期待される。近年、N2O還元酵素機能遺伝子(nosZ)の配列解析により、N2O還元細菌は大きく2つのグループに分類されることが明らかとなった。一方で、この分類の違いが生理学的特性に与える影響は明らかになっていない。我々のこれまでの研究でclade II typeのnosZを有する、Rhodocyclaseae 科のDechloromonas sp., Azospira sp.を活性汚泥から集積培養を経ることで獲得した。そこで本研究では、これらの単離株のN2O還元活性を動力学的観点からの比較評価する。特に、O2が存在する環境からN2O還元活性が発現するダイナミクスを追跡した。実験では獲得した単離株に加えて、Pseudomonas stutzeri, Paracoccus denitrificans をnosZ clade I typeの脱窒細菌として選択した。微小電極を用いたMicro-respiration system (Unisense社)により、N2OとO2プロファイルを同時測定した。得られたプロファイルをMonod式にフィッティングすることでN2O最大消費速度Vm_N2OとN2Oに対する半飽和定数Km_N2Oの算出を算出した。Azospira sp., Dechloromonas sp.はKm_N2Oが0.8 - 4.2 μMと高い親和性を示したのに対して、Pa.denitirificansは35 μMとN2Oに対する親和性が低いことが明らかとなった。またPs. stuzeriはKm_N2O=4.0μM, Vm_N2Oにおいてもclade IIと比較して有意差は認められなかったものの、O2が完全に消費されてから最大N2O消費速度を発揮するまでに4時間以上という長い時間が必要となることが示唆された。これらの結果を比較するために、Monod式に加えて、酵素の合成・活性化とO2阻害を表現したモデル(Enzyme-explicit denitirification model)を適用し、シミュレーションによりclade IIに属する種はO2阻害からの回復能力が高い傾向が示された。一方でO2阻害の度合は菌種間で異なり、nosZ typeには依存しないことが示唆されてた。今回nosZ clade II typeの細菌株において、N2Oへの高い親和性、またはO2阻害からの回復が早いことが定量的に明らかとなり、nosZ clade II typeがO2濃度がダイナミックに変動するような環境中でN2O消費を担える可能性が示された。
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