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演題詳細

P-015:
膜分離活性汚泥法による高濃度油含有実廃水処理の効率化に関与する候補微生物群
○田中 亮一1,2, 納嵜 克也1, Navarro Ronald2, 稲葉 知大2, 尾形 敦2, 柳下 宏3, 堀 知行2, 羽部 浩2 1熊本県産業技術センター, 2産総研・環境管理, 3産総研・中国センター
【目的】油分解に関与する好気微生物の研究は数多く行われ、廃水処理中から多くの油分解菌が分離・解析されてきた。しかし、油を高濃度で含む実廃水処理において微生物群集の動態に関する知見は乏しい。一方、省スペース・高効率の処理法である膜分離活性汚泥法(Membrane bioreactor:MBR)が近年注目されている。しかし、MBRの問題点として膜の目詰まり(ファウリング)があり、油や微生物自体がその要因として報告されている。そこで本研究では、高濃度油含有実廃水として拉麺廃液に着目し、そのMBRによる処理試験を行った。廃水処理における油濃度上昇に付随した微生物群集遷移を解析し、実廃水中の油分解に中心的に関与する微生物群を推定した。
【方法・結果】27L容量のMBRに拉麺廃液を水理学的滞留時間5.4日で流入させ、約1ヶ月間運転を継続した。この間、廃液中の油濃度を135 mg/L (廃液原液の200倍希釈)から2700 mg/L (10倍希釈)まで段階的に引き上げた。MLSS、DO、TOC、膜間差圧を連続的に追跡したところ、油濃度135 mg/Lまでは、緩やかなMLSSの上昇が観察されるとともに、処理水のTOCが10 mg/L以下に保たれ、安定的な処理状態が観察された。しかし、油濃度2700 mg/LではMLSSの急激な増加に伴って膜間差圧が上昇し(膜ファウリングが起こり)、処理能の低下が見られた。16S rRNA遺伝子に基づく次世代シークエンサー(MiSeq Illumina)解析において、門および網レベルで系統的に特徴づけたところ、油濃度の段階的増加に伴う群集構造の劇的な変化が見出された。また、OUT(operational taxonomic unit)レベル解析の結果、油濃度上昇とともに増殖する微生物が3種同定された。最も増加率が高かったものは、最終油濃度2700 mg/Lで全体の26%を占め、他の2種も10%弱を占めていることが明らかとなり、これら微生物群が拉麺廃液処理の効率化に重要である可能性が示唆された。
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