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演題詳細

P-022:
環境中におけるメンブランベシクルを介した異種間相互作用の解析
○鬼澤 里奈1, 豊福 雅典2, 森永 花菜1, 尾花 望1, 野村 暢彦2 1筑波大院・生命環境, 2筑波大・生命環境系
近年、多くの細菌がメンブランベシクル(MV)を産生することが報告されている。MVとは、主に細胞膜によって形成される直径20~400 nmの球体であり、タンパク質や脂質、DNAやシグナル物質などを含むことが知られている。また、MVは遺伝子の水平伝播や微生物間コミュニケーション、宿主との相互作用への寄与等の様々な機能を持つことが示されており、MVは細胞間相互作用において重要な役割を担っていると考えられる。これまでに報告されているMV研究のほとんどが単離株を用いた限られた条件下におけるものである。その一方で,アメリカ東海岸沖および外洋の海水サンプルにおいてMVが豊富に存在するなど(Biller et al., 2014), 実環境中にも多く存在し,微生物生態に深く関与している可能性がある。しかしながら、実環境中におけるMVの存在や機能に関する報告はほとんどなく、いまだ未解明な部分が多い。そこで、本研究では実環境中におけるMV生産およびその役割を明らかにすることを目的とした。微生物が多く存在する環境として活性汚泥を材料とし、MV生産菌の同定およびMV受容菌の探索を行った。細胞外に放出された膜脂質を定量し,TEMによって微細構造を観察したところ,活性汚泥サンプルからMV様粒子が同定された。活性汚泥中にはMV産生菌が存在することが示唆された。さらに,このMV様粒子が微生物由来かどうか,生物マーカー等を持いて検証していく。また、単離株から分離したMVを蛍光染色し、活性汚泥サンプルに添加することで、MV受容菌の探索も行っている。MV供与菌としては、活性汚泥からの単離株であるParacoccus属細菌を用いた。本細菌は活性汚泥から多く単離され,先行研究においてMV生産や同種菌へのMVの付着が確認されている。今後,活性汚泥中のMV生産菌と受容菌の関係を明らかにしていくことで,MVを介した微生物間ネットワークの解明および複合微生物系理解へと繋がることが期待される。
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