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演題詳細

P-021:
Paenibacillus属細菌はバイオフィルム中に耐性の高い芽胞を形成する
○加藤 寛子1, 横山 佳奈2, 尾花 望3, 久保田 浩美2, 八城 勢造2, 永井 智2, 野村 暢彦3 1筑波大・生物資源, 2花王株式会社・安全性科学研究所, 3筑波大・生命環境系
細菌が形成する芽胞は、栄養細胞に比べて熱や薬剤に対して高い耐性を有している。食品業界では芽胞の殺菌剤として過酢酸が用いられる。しかし、Paenibacillus属細菌の芽胞は過酢酸に対しても耐性を有することから、食品腐敗菌として問題視されている。当研究室先行研究により、Paenibacillus属細菌はバイオフィルム形成能を有しており、さらにその内部にも芽胞を形成することが明らかとなった。実環境中において微生物の大多数がバイオフィルムを形成して生育していることから、我々はバイオフィルム由来芽胞の特性を理解することが重要であると考えた。そこで本研究では、Paenibacillus属細菌のバイオフィルム中に形成される芽胞の解析を行った。
P. polymyxaP. chibensisのバイオフィルム及び浮遊菌由来芽胞を位相差顕微鏡で観察したところ、バイオフィルム由来芽胞の方が長径が長いことが明らかとなった。さらに、TEM観察によって、P. polymyxaの芽胞ではバイオフィルム由来芽胞の方が最外層構造であるcoatが厚いことが示された。coatは芽胞の耐性に関与することが知られているため、次にP. polymyxaのバイオフィルム由来及び浮遊菌由来の芽胞を精製し、その熱耐性と過酢酸耐性を比較した。その結果、バイオフィルム由来芽胞の方が耐性が高いことが明らかとなった。さらに、それぞれの芽胞の発芽効率を比較したところ、バイオフィルム由来芽胞の方が高い休眠性を有していた。枯草菌においては極めて休眠性の高いsuper dormant sporeの存在が報告されており、通常の芽胞より高い耐久性を有する。そのため、P. polymyxaのバイオフィルム由来芽胞にはより多くのsuper dormant sporeが存在し、耐性が向上していることが考えられた。また、P. polymyxaは食品製造装置に多く用いられる材質であるステンレス上にもバイオフィルムを形成し、その内部に芽胞を形成することが示された。
以上より、Paenibacillus属細菌はバイオフィルム中に浮遊菌と比較して耐性の高い芽胞を形成することが明らかとなった。バイオフィルム由来芽胞のcoat構造や高い休眠性がその耐性に寄与すると考えられる。本属菌は食品製造過程において、ステンレス上にバイオフィルムを形成し、その内部により耐性の高い芽胞を形成することで、加工食品へ混入及び残存する可能性が考えられた。
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