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演題詳細

P-024:
NRPがロドコッカス属細菌の集団形態を制御する
○茂木 亮介1, 長田 啓司1, 稲葉 知大2, 尾花 望3, 豊福 雅典3, 野村 暢彦3 1筑波大院・生命環境, 2産総研・環境管理, 3筑波大・生命環境系
実環境中において、いくつかの微生物は凝集体と呼ばれる集団形態で生息している。凝集体は微生物が自己凝集して形成される構造体であり、液中に浮遊・沈殿した状態で存在する。凝集体形成による菌体の沈降は固液分離プロセスに利用されるため、凝集体形成は発酵や排水処理などの微生物を用いた産業において重要である。しかし凝集体形成の分子メカニズムには未解明な点が多く、その制御は現在においても容易ではない。
当研究室で単離された放線菌Rhodococcus sp. SD-74は、液体培地中で粒径が数mmにも及ぶ凝集体を形成する。SD-74株の凝集形態は、粒径数十μmの微小な凝集体の形成、微小な凝集体の集合による凝集体の発達、崩壊による細分化というステージを有している。我々は、ランダムに遺伝子が破壊されたトランスポゾンライブラリー中から、長期培養後も凝集体が崩壊しないトランスポゾン変異株を見出した。この変異株はNonribosomal peptide synthetase (NRPS) をコードする遺伝子が破壊されており、本NRPS遺伝子のインフレーム破壊株においても凝集体の崩壊は見られなかった。NRPS遺伝子の発現量解析により、凝集体崩壊後のNRPS遺伝子発現量は凝集体崩壊前に比べて増大しており、凝集体崩壊時にその発現が誘導されていることが示唆された。一般にNRPSはNonribosomal peptide (NRP) と総称されるペプチドを産生するため、本NRPSによって産生されるNRPが凝集体の崩壊に必須であると考えられる。SD-74株は秩序だった凝集形態を有するために自律的な凝集形態制御が存在することが予想されたが、本研究はNRPがその一因子であることを強く示唆している。このことは、多くの産業用途に利用されている放線菌の凝集形態制御因子にも重要な知見を与え、微生物産業に大きく資する可能性を示している。
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