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演題詳細

P-028:
競争条件下における異属微生物の共存機構解明
○鈴木 研志1, 本荘 雅弘2, Azwani Fatma3, 斉藤 保久4, 田代 陽介2, 二又 裕之1,2,5 1静大・創造, 2静大・院工, 3Univ. Putra Malaysia, 4島根大・総, 5静大・グリーン研 suzuki.kenshi.15@shizuoka.ac.jp
地球上の様々な環境において、微生物は相互関係を築くことで微生物生態系を構築している。微生物生態系は内外の環境変化に対応するため、その群集構造を柔軟に変化させつつ生態系としての機能を維持している。しかし生態系における群集構造変遷および機能維持機構は未だ概念の域を超えておらず、その解明が希求されている。環境中では利用できる基質に限りがあり、存在する微生物間で基質を巡る競争が起きていると考えられる。Lotka-Volterra競争理論によれば、単一基質を巡る競争系では最も競争力の高い微生物が優占化し、他の微生物は淘汰されてしまう。一方で、土壌を接種源としフェノールを唯一の炭素源とする連続集積培養系では、群集構造および機能の変遷が収束した培養後期においても様々な微生物種の共存が確認されている。この競争理論のみでは説明することができない共存を解明することは、微生物生態系の持つ機能的恒常性と環境変化に対する群集構造の柔軟性の理解につながると考えられる。そこで本研究では競争条件下における種の共存機構の解明を目的とし、上記集積培養系より単離されたPseudomonas sp. LAB-08株、Ralstonia sp. P-10株およびComamonas testosteroni R2株の三菌株を用いて、フェノールを唯一の炭素源とする二菌株混合培養系を構築し動態解析を行った。その結果全ての培養系において二菌株の共存が確認された。興味深いことに、フェノールおよびカテコールに対する動力学的解析の結果、P-10株およびR2株混合培養系において、P-10株がフェノールを分解し、代謝産物であるカテコールをR2株が分解あるいは二菌株で共有している様が観察された。そこで、フェノールがP-10株によってカテコールに変換され、カテコールが両株によって分解されるモデルを構築し解析を行った。その結果、カテコールの共有率に依存しないで共存することが数学的に否定された。即ち、P-10株およびR2株の共存を可能とするカテコール共有率の範囲が存在することが示唆された。以上のことから、競争条件下にあるにも関わらず両菌株の共存が可能なのは、菌株間の相互作用によって互いの代謝が精巧に制御されているからであると考えられた。また、基質あるいは代謝産物の共有率の幅が微生物生態系における柔軟性であり、その範囲における代謝バランスの揺らぎが群集構造変遷として捉えられていると推察された。
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