Imgheader01

第31回大会ホームページへ

演題詳細

P-027:
硫黄源が関与する枯草菌の寒天培地上のシアノバクテリアの増殖誘導能
○林 昌平, 竹村 萌香, 井藤 和人, 巣山 弘介 島根大・生資 shohaya@life.shimane-u.ac.jp
【背景と目的】シアノバクテリアSynechococcus leopoliensis CCAP1405/1株は、有機物含有培地である1/10PTYG寒天培地上では増殖しないが、枯草菌Bacillus subtilis 168が共存すると増殖する。B. subtilis 168が1405/1株に増殖必須因子を供給していると予想された。その因子を特定するためにB. subtilis 168の遺伝子欠損ライブラリーから1405/1株の増殖誘導能を欠損した株を同定した。その中にyvgQyvgR欠損株があり、これらの遺伝子はシステイン生合成経路において亜硫酸を硫化物に還元する酵素をコードすると推定されている。そこで寒天培地にシステインを添加すると、欠損株の増殖誘導能が相補されたが、システイン添加のみでは1405/1株の増殖は誘導されなかった。また、大腸菌のシステイン生合成経路には硫酸塩またはチオ硫酸塩を初発基質にする2つの経路があることが知られている。そこで本研究では、B. subtilis 168が寒天培地上で1405/1株を増殖させる能力に関与するシステイン生合成経路とB. subtilis 168が供給する増殖必須因子を解明するために実験を行った。
【方法】システイン生合成に関与すると推定される種々の硫黄含有物(チオ硫酸Na、硫酸Na、亜硫酸Na、硫化Na、システイン)を添加した1/10PTYG寒天培地上で、1405/1株を単独培養、またはB. subtilis 168、yvgQ欠損株、yvgR欠損株と共培養し、1405/1株の増殖を調査した。
【結果と考察】チオ硫酸Naを添加すると1405/1株が単独で増殖することから寒天培地上ではチオ硫酸塩を初発基質にシステインを生合成して増殖すると予想した。yvgQR欠損株が1405/1株の増殖誘導能を失ったこと、硫化Na添加によって1405/1株が単独で増殖したが硫酸Na添加によっては増殖しなかったことから、1405/1株は硫酸塩を初発基質にシステインを生合成する経路中の亜硫酸を硫化物に還元する反応が阻害されているために寒天培地上で増殖できず、B. subtilis 168は硫化物以降の化合物を1405/1株に供給することで寒天培地上での1405/1株の増殖を誘導していると考えられる。興味深いことに、チオ硫酸Naを添加してもyvgQR欠損株が共存すると、また、硫化Naを添加しても枯草菌が共存すると1405/1株はほとんど増殖しなかった。これらのことからチオ硫酸Naか硫化Naが存在すると枯草菌の増殖誘導能が抑制されると考えられる。
PDF