Imgheader01

第31回大会ホームページへ

演題詳細

P-035:
Quorum-sensing機構による亜硝酸酸化細菌Nitrospira japonicaの活性制御メカニズム
牛木 章友1, ○島田 侑1, 藤谷 拓嗣1, 諸星 知広2, 常田 聡1 1早大院・生医, 2宇大院・工
【背景】亜硝酸酸化細菌Nitrospiraは亜硝酸を硝酸に酸化することでエネルギーを獲得する独立栄養性細菌であり、生態系における窒素循環の一角を担っている。しかしながら、Nitrospiraは分離培養が困難であるため、その性質の多くが謎に包まれている。これまでに我々の研究チームではNitrospira japonica NJ1株の分離培養に成功し、ゲノム配列の解読を完了している。その結果、N. japonica NJ1株はアシル化ホモセリンラクトン(AHL)合成遺伝子とAHL受容体遺伝子を保持しており、これまでにNitrospira属では報告のないQuorum-sensing (QS)機構により微生物活性を制御している可能性が示唆された。そこで本研究では、QS機構によるN. japonica NJ1株の遺伝子発現制御を調査し、亜硝酸酸化活性に対する制御機構の解明を目的とする。
【方法】菌体密度とQS機構関連遺伝子の関係性を調査するために、N. japonica NJ1株を亜硝酸含有無機培地で12日間振とう培養し、細菌数、QS機構関連遺伝子の発現量の変化を測定した。また、N. japonica NJ1株からDNAを抽出し、AHL合成遺伝子をPCRで増幅後、大腸菌E. coli JM109株に形質転換した。つづいて、形質転換したE. coli JM109株をLB培地で一晩振とう培養し、培養上清を孔径0.22μmの滅菌フィルターで処理後、LC-MSにより同定を試みた。さらに、上記の上清サンプルをN. japonica NJ1株に添加後、数日間振とう培養し、亜硝酸酸化活性の評価、亜硝酸酸化還元酵素をコードするnxrA遺伝子の発現量を測定した。
【結果】12日間の培養試験の結果、細菌数の増加に伴いQS機構関連遺伝子の発現量が増加することが確認された。また、形質転換したE. coli JM109株の培養上清をLC-MSにより同定した結果、上清中には5種類のAHLが分泌されていることが明らかになった。さらに、上記の上清サンプルをN. japonica NJ1株に添加した結果、亜硝酸酸化活性が向上し、一部のnxrA遺伝子の発現が誘導されていることが明らかになった。したがって、N. japonica NJ1株はQS機構により、細菌数に依存した亜硝酸酸化活性制御を行うという新たな知見が見出された。
PDF