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湿地から分離した新規硫酸還元細菌NAW-5株の諸特性とグラム陽性硫酸還元細菌群の再分類の検討
Desulfotomaculum属は、グラム陽性胞子形成性の硫酸還元細菌の一群である。この属は系統的多様性が非常に高いために、これに含まれる35種は8つの下位分類群(DesulfotomaculumサブクラスターIa~Ih)に分けられている。この下位分類群の中にはCryptanaerobacter, Desulfurispora, Pelotomaculum, Sporotomaculumの4属も混在しており、その中には硫酸還元を行わないものも含まれる。本研究は、Desulfotomaculum属の新規細菌NAW-5株の諸特性を明らかにするとともに、Desulfotomaculum属の下位分類群の系統的位置について検討することを目的とした。NAW-5株は湿地帯土壌より得られた。NAW-5株の細胞は幅約1 μm、長さ5-10 μmほどのらせん状で、70-80 μm程の長さになるものもあった。細胞は運動性を有しており、グラム染色性は陰性であった。硫酸塩の存在下で、さまざまな有機酸類を炭素源及びエネルギー源として利用した。酢酸・イーストエキスの存在下で、硫酸塩、チオ硫酸塩、単体硫黄を電子受容体として利用した。発酵条件下では、ピルビン酸、フマル酸、安息香酸を用いて増殖した。増殖の最適温度は32-37℃で、ゲノムDNAのG+C含量は46.6%であった。16S rRNA遺伝子配列の解析では、NAW-5株はDesulfotomaculum属、Pelotomaculum属、Cryptanaerobacter属の様々な種との間に90%ほどの配列相同性を有していることが示された。系統樹上では、NAW-5株はDesulfotomaculumサブクラスターIgに属することが示された。近隣の分類群との関係性などから、NAW-5株についてはこれを唯一の種とする新属を設けるのが適切であると考えられた。また、これまでの分類学的研究によってDesulfotomaculum属の個々のサブクラスターはそれぞれが属レベルの独立性を有することがすでに示されている。そのため、Desulfotomaculum属のそれぞれのサブクラスターに対応する新たな属を設けて、大規模な再分類を行うことを提唱する。