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演題詳細

P-072:
寒天培地表面への微細凹凸形成による微生物の培養制御の試み
○内山 茂1, 礒島 隆史2, 伊藤 嘉浩2, 中村 振一郎1 1理研・中村特別研究室, 2理研・伊藤ナノ医工学研究室 s.uchiyama@riken.jp
【背景・目的】微生物を培養してコロニーを形成させる場合に用いる寒天培地は、通常表面が平滑である。この表面を微細な凹凸構造にした場合、コロニーの広がり方にどのような変化が生じるのかについて検討した知見はこれまで殆どない。本研究では表面構造による培養制御を目指して、表面に微細な凹凸構造を形成させた様々なシリコーン型を作製してそれを寒天培地に転写することにより微細な凹凸表面構造を有する寒天平板を作製し、大腸菌、枯草菌、紅色光合成細菌および酵母菌のコロニーを形成させて平滑寒天培地表面におけるコロニーの形状と比較した。【方法及び結果】予備実験として、ハスやサトイモの葉などの天然素材や、目の粗さの異なるサンドペーパーやメッシュクロスおよびアルキルケテンダイマーによるフラクタル表面などを用いた。これらを直径9cmのプラスチック製ペトリ皿の底の片半面に貼りつけ、もう半面にはアクリル薄板を張り付けて、その上に高精細転写用シリコーン印象材(SIM-240、信越化学)を流し入れて減圧脱泡し、40℃で2時間硬化させた後に剥離して素材の表面形状を転写したシリコーン型を作製した。寒天培地は一般細菌用としてトリプトソイ寒天培地、紅色光合成細菌用としてPE寒天培地、また酵母菌用としてYM寒天培地を用いた。枯草菌、大腸菌、紅色光合成細菌、酵母菌は、それぞれ105CFU/mlに調整した懸濁液1μlを上記寒天培地に点接種して30℃で3~5日間培養してコロニーを形成させた。その結果、ハスの葉、サトイモの葉、アルキルケテンダイマーの表面構造を転写した寒天培地では平滑面に形成されたコントロールのコロニーと比べて明らかに小さくなった。一方、目開き6~24μmのメッシュクロスを転写した寒天培地ではコロニーが薄く速やかに広がる傾向が見られた。これらの結果から寒天培地表面を微細な凹凸にすることで微生物の増殖を制御できる可能性が示唆された。寒天培地表面の微細構造のサイズや形状が増殖に及ぼす影響を定量的に明らかにするため、ガラス基板に塗布したフォトレジスト(AZ1500)をフォトリソグラフィによって一定間隔でライン・スペース化した単純な凹凸構造パターンの原型を作製し、それを寒天培地表面に転写して、それぞれの微生物のコロニー形成や増殖速度への影響を検討している。結果は当日報告する。
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