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演題詳細

P-103:
国内の大水深淡水湖に生息する細菌群集の網羅的分析
○岡崎 友輔1, 藤永 承平1, 田中 敦2, 高津 文人2, 大八木 英夫3, 中野 伸一1 1京都大学生態学研究センター, 2国立環境研究所, 3日本大学文理学部
日本は地形の変化に富み、世界的にも珍しい、大水深淡水湖(水深50~200m以上)を豊富に有する国土を持つ。大水深の湖では湖底まで光が届かないため、春~秋にかけて海洋と同様に温度躍層が発達する。琵琶湖・摩周湖・猪苗代湖・本栖湖といった国内の多くの大水深淡水湖では、成層期間中も温度躍層以深が有酸素に保たれ、好気・低温・無光の水塊(好気的深水層)として維持される。この好気的深水層は、湖の体積の過半を占め、表層の一次生産由来の有機物の貯蔵・分解の場として機能している。したがって、そこに生息する細菌群集は、湖全体の物質循環・生態系において重要な役割を担っていると考えられる。
アメリカのCrater Lakeや五大湖、アルプス山系の淡水湖、および琵琶湖で報告されてきた先行研究の断片的な情報を総合すると、好気的深水層には、表水層で見られる一般的な淡水産系統 (Actinobacteria, Proteobacteria, Bacteroidetes)とは門レベルで異なるユニークな細菌系統が生息していると考えられる。しかし、網羅的な情報が存在しないことから、好気的深水層に生息する細菌系統に関する統一的な見解は未だ得られていない。そこで本研究では、2015年夏に国内の10の大水深淡水湖で鉛直的に採集したサンプルを用いて、16S rRNA遺伝子アンプリコンシーケンスおよびCARD-FISHによる細菌群集組成解析を行い、好気的深水層に生息する細菌系統に関する網羅的な知見を収集した。
その結果、北海道の摩周湖からから鹿児島の池田湖まで、幅広い環境の湖を対象としたにも関わらず、好気的深水層に共通して生息する系統が多数特定された。総じて、好気的深水層の細菌群集は「全水層で優占するジェネラリスト」と「深水層スペシャリスト」で構成され、スペシャリストでは特に、1系統のChloroflexi(CL500-11) と多様なPlanctomycetes(CL500-3, -37, -15等) が多数を占める傾向が見られた。FISH の結果は、アンプリコンシーケンスで得られたパターンと概ね一致し、全細菌に占める割合(FISH/DAPI) で見ると、CL500-11 は10 湖中3 湖で15%を超える高い現存量を示し、CL500-3, やCL500-37 でも現存量が3%を超える湖があった。本研究により、淡水湖の好気的深水層をニッチとする主要な細菌系統の特定に成功した。今後は、大水深淡水湖を豊富に有する日本の地の利を生かし、個々の系統に焦点を当てた生理・生態的特性や系統・進化的背景の解明が課題である。
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