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河床礫バイオフィルムにおいて共存する緑藻の生育を抑制する好気従属栄養性細菌
○高城 遥, 西原 亜理沙, 松浦 克美, 春田 伸
首都大・院生命
河床礫上には、緑藻を主要一次生産者とするバイオフィルムが発達している。そこでは多様な細菌が共存し、ミクロな生態系を形成している。しかしながら、それら細菌の緑藻に対する作用についてはほとんど調べられていない。本研究では、河床礫バイオフィルムにおいて緑藻と共存する好気従属栄養性細菌について、緑藻への生育抑制能に注目し、緑藻の生育を抑制する細菌の探索とその多様性を明らかにすることを目的とした。
多摩川中流域の河川礫バイオフィルムを採取し(2016年6月)、分散・希釈した後,緑藻Chlorella vulgarisNIES2170の細胞を混釈した固体培地に塗布した。培地には緑藻細胞の他に有機炭素源も添加し、好気・光照射条件、24℃で培養した。培養3日後、約500個の細菌コロニーの形成が確認された。そのうち約30コロニーの周りで、緑藻の混釈固体培地に阻止円の形成が確認された。同条件で培養を繰り返し、安定して緑藻の生育抑制能が観察される4株を得ることができた。それら4株の16S rRNA遺伝子塩基配列を解析したところ、いずれもPseudomonas属であったが、種レベルで異なると考えられた。これら4株についてC. vulgarisと液体共培養を行い、経時的に培養液のクロロフィルa量を定量した。単離株との共培養実験では、すべての共培養系で緑藻の生育抑制が見られた。また培養36時間後にて緑藻の単独培養系と比較すると、すべての単離株との共培養系でクロロフィルa量が半分以下になった。4株の細菌をそれぞれ単独培養した後、その培養上清を回収し、緑藻の培養液に同量を添加した。緑藻の生育への効果を見たところ、3株の培養上清に生育抑制作用が観察された。
緑藻が優占する多摩川河川礫バイオフィルムから,緑藻の生育を抑制するPseudomonas属細菌を分離した。これらは種レベルで異なると考えられ、また培養上清にも緑藻の生育抑制作用に違いがあることが示唆された。シアノバクテリアに生育抑制作用を示すPseudomonas属細菌の報告はあるが、今回単離した細菌はそれらと系統的に異なると考えられた。またこれまでに多摩川の河床礫バイオフィルムから、緑藻の生育を抑制する細菌としてHerbaspirillum属細菌も分離されており、河床礫バイオフィルムにおいて多様な系統の細菌が緑藻の生育に影響を与えていることが示唆された。