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演題詳細

P-106:
深海底熱水活動域に普遍的に生息する化学合成独立栄養細菌の生物地理学的特徴の解明
○美野 さやか1, 中川 聡2, 牧田 寛子3, 工藤 桃李1, 宮崎 淳一3, 稲垣 史生3, 加藤 真悟4, 布浦 拓郎3, 井町 寛之3, 和辻 智郎3, 高井 研3, 澤辺 智雄1 1北海道大・院水, 2京都大・院農, 3JAMSTEC, 4RIKEN sayaka.mino@fish.hokudai.ac.jp
 深海底熱水活動域には、化学合成独立栄養微生物に立脚した独自の生態系が育まれている。現場に生息する大型生物は、海域ごとに異なる群集構造を形成することから、地理的分布様式の記載的研究はもとより、分布様式を決定する要因の一つである幼生分散を、海洋物理学的知見と併せて理解する高度な研究も進展している。一方、微生物においては、異なる海域から極めて類似した16S rRNA遺伝子情報を持つ微生物が検出されることから、彼らの分散には制限がないことが推測されている。しかしながら、特定の微生物系統群内における詳細な遺伝的・生理学的特徴や分布様式に関しては理解が乏しい。
 EpsilonproteobacteriaSulfurimonasに属する微生物グループは、常温性の化学合成独立栄養細菌を含み、世界各地の深海底熱水活動域に優占するコスモポリタン種として知られている。我々は、4つの海域(沖縄トラフ、北部・南部マリアナ、中央インド洋海嶺、大西洋中央海嶺)の深海底熱水活動域から分離した109株のSulfurimonasを対象に、multilocus sequence analysis (MLSA)法を確立し、集団遺伝学的解析を行った。その結果、極めて分類学的相同性の高いSulfurimonasであるにもかかわらず、海域独自の遺伝的特徴を有する集団が存在し、大型生物同様に分散は制限されることをつきとめた。本研究では、上述した結果とともに、海域独自の遺伝的特徴の形成に影響しうる要因や、他系統群との比較による分散能の評価、および分離株の各海域環境への適応の可能性について、培養実験に基づく生理学的特徴の結果を加えて報告したい。
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