Imgheader01

第31回大会ホームページへ

演題詳細

P-110:
好熱単細胞性シアノバクテリアと糸状性光合成細菌との共培養によるバイオフィルム形成
○河合 繁, 松浦 克美, 春田 伸 首都大・院生命 kawai-shigeru@ed.tmu.ac.jp
アルカリ温泉に広く分布する好熱単細胞性シアノバクテリアThermosynechococcus sp.は、増殖条件において細胞凝集や固体表面付着性が観察されていない。温泉地では、本菌を優占種とする微生物マットが温泉流水中で岩肌や砂地表面に付着している様子が観察される。本研究では、微生物マットの形成機構を探るため、共存細菌が好熱性シアノバクテリアに与える影響を明らかにすることを目的とした。長野県中房温泉にて、55℃の温泉水が流れるコンクリート壁面に付着して発達する微生物マットを採取した。マットの一部を光独立栄養条件で静置培養したところ、ガラスフラスコ壁面に緑色のバイオフィルム形成が見られた。バイオフィルムを掻きとり、同条件で培養を繰り返し、再現的にフィルムを形成する培養系が得られた。クリスタルバイオレット染色法を用いて付着画分と浮遊画分の細胞量を調べたところ、付着画分に全体の80%以上が存在すると考えられた。ガラス表面のバイオフィルムを顕微鏡で観察したところ、単細胞性シアノバクテリアの他に、糸状性細菌および桿菌の存在が確認された。好気従属栄養条件で共存細菌を単離し、中房温泉由来のThermosynechococcus sp. NK55aと共培養して、そのフィルム形成能を検証した。試行した33株のうち、1株(F1株)で顕著なフィルム形成が観察された。F1株について、16S rRNA遺伝子塩基配列を解析したところ、糸状性光合成細菌であるChloroflexus aurantiacusと100%の相同性を示した。C. aurantiacusの近縁種を用いて、同様に試験したところ、Roseiflexus castenholzii DSM 13941ではフィルム形成が見られたが、Chloroflexus aggregans strain NBFとの共培養によるフィルム形成は見られなかった。単独では細胞凝集性および付着性を示さないThermosynechococcus sp.も他菌の共存条件で、ガラス表面に付着して生育することが明らかになった。フィルム形成に寄与した糸状性光合成細菌は、本培養条件において独立栄養生育を示さないことから、シアノバクテリアから有機炭素化合物の供給を受けていると予想される。
PDF