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演題詳細

P-117:
A primordial and reversible TCA cycle in a facultatively chemolithoautotrophic thermophile
○布浦 拓郎1, 力石 嘉人1, 原田 健史2, 森 浩二2, 加藤 裕美子2, 佐藤 喬章3, 柳川 勝紀1, 宮崎 征行1, 首藤 彩1, 大河内 直彦1, 藤田 信之2, 跡見 晴幸3, 高木 善弘1, 高井 研1 1海洋研究開発機構, 2製品評価技術基盤機構, 3京都大・工 takuron@jamstec.go.jp
還元的TCA回路はWood-Ljungdahl経路と並び、最も始原的な炭酸固定経路とされている。従来、この還元的TCA回路にはATP citrate lyaseやその代替経路(citryl CoA synthase/citryl CoA lyase)が不可欠とされてきた。我々は、始原的バクテリア系統に属す好熱性水素酸化硫黄還元細菌Thermosulfidibacterに対し、ゲノム解析、酵素活性測定メタボローム解析及びを行い、添加した炭素源により回転方向が変化する可逆的なTCA回路の存在を明らかにした。これまでの解析結果は、独立栄養条件下において、本菌は、ATP citrate lyaseやその代替経路ではなく、citrate synthaseの逆反応により還元的TCA回路を駆動し炭素固定を行なうことを示す。また、混合栄養条件においてacetateを添加した場合、acetyl CoAを起点に分岐するTCA経路が、succinateを添加した場合、succinateを分岐点とする分岐型TCA経路が機能することを確認した。これらの結果は、ATP citrate lyase等のATP依存citrate開裂 は還元型TCA回路に不可欠な要素ではないこと、充分な還元力さえ存在すれば、非ATP依存的にcitrate synthaseの逆反応により還元型TCA回路が成立し、炭素固定経路として機能し得ることを示すものである。さらに、可逆的なcitrate synthaseの機能を伴うTCA回路の存在は、初期生命は偏性の独立栄養や従属栄養生物ではなく、利用可能な物質の濃度に依存して柔軟に代謝を変化させる混合栄養生物として誕生した可能性を示唆する。
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