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演題詳細

P-119:
蛍光顕微鏡を用いた火星生命探査における蛍光色素系の確立
○村野 由佳1, 吉村 義隆2, 宮川 厚夫1, 佐々木 聰3, 横堀 伸一1, 佐藤 毅彦4, 山岸 明彦1 1東薬大・生命, 2玉川大・農, 3東京工科大院・医療保健, 4JAXA/ISAS
火星探査の進捗により現在の火星の姿が明らかになって来た。Mars Reconnaissance Orbiterは液体の水の存在を示唆する春と夏に現れる流出地形RSLを発見した(2011. McEwen et al., Science 333: 740)。RSLに流れる液体は赤外線測定から高塩濃度の水であることが示唆された(Ojha et al. 2015. Nat. Geosci. 8: 829)。また、NASAの火星探査車MSL: Curiosityが生命に必要な軽元素や、化学合成細菌の生存を支え得る還元型硫化物を発見した(Ming et al. 2014. Science 343: 1245267)。有機化合物はMSL上のSAM (Sample Analysis on Mars)によっても検出された(Freissient et al. 2015. J. Geophys. Res. Planets 120: 495)。一方、Yamagishi等(2010. Bio. Sci. Space. 24: 67)は、火星表面土壌の蛍光顕微鏡観察によって生命の有無を検出する火星生命探査を提案した。蛍光色素SYTO24は細胞膜を通過して有機物を緑色に染色し、蛍光色素Propidium Iodide (PI)は細胞膜を通過できないが有機物を赤色に染色する。この2種類の色素を組み合わせ、微生物の生死と有機物の有無を判別する。更に、蛍光の消光によって自家蛍光を持つ鉱物と染色した微生物も識別可能である。
本研究の目的は、蛍光顕微鏡による火星生命探査において、火星土壌中から微生物、有機化合物、鉱物を識別できる蛍光色素システムを確立することである。(1) 蛍光色素の宇宙・火星環境への耐性。顕微鏡を載せるローバー内部は±20℃以内に保たれるが、顕微鏡がより高い温度に曝される可能性がある。そこで、SYTO24とPIを1週間、50、60、70、80℃で保温し、吸光度を測定した。蛍光色素の各温度における吸光度の変化から崩壊定数を推定し、火星表面における色素の安定性を推定した。更に、高温に曝した蛍光色素で微生物の染色が可能であった。従って2つの蛍光色素は蛍光顕微鏡による火星生命探査に使用可能であると結論づけた。(2)火星探査モデル同等の光学系の作成及び観察実験。現在、火星探査用と同等の光学系をもつ蛍光顕微鏡を用いた色素系の検証を行っている。SYTO24とPIによって染色した微生物は、この顕微鏡で検出可能であった。火星生命探査計画のための蛍光顕微鏡用色素系開発の現状について紹介する。
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