P-131:
放線菌フランキアの窒素固定変異株のスクリーニングと特徴づけ
○松山 伸太朗, 玉利 大樹, 九町 健一
鹿児島大・院理工
フランキアは窒素固定能を持つ多細胞放線菌の一種である.ハンノキやモクマオウなどアクチノリザルと呼ばれる植物の根に共生して根粒を形成することもできる.フランキアはベシクルと呼ばれるホパノイド脂質の多重層で覆われた球状細胞を分化し,そこで窒素固定を行う.窒素固定酵素の合成に関わるnif遺伝子群は,他の窒素固定細菌のものと相同性を示し,それらの転写は他の窒素固定細菌と同様に窒素欠乏時にのみ活性化される.しかしフランキアのゲノムには,既知のnif遺伝子調節遺伝子は存在しない.またベシクル形成はフランキアの特有の性質であり,これに関わる遺伝子は分かっていない.本研究では遺伝学的手法により,フランキアの窒素固定に関わる遺伝子を同定することをめざし,窒素固定に異常を示す変異株をスクリーニングした.私たちの研究室では単一遺伝子型の細胞のみからなる菌糸を濃縮する方法を開発し ,フランキアにおいて機能欠損型の変異株を単離できるようになった (Kakoi et al., Microbes Environ, 29, 31-37, 2014).ニトロソグアニジン(NTG)(3556個)および,ガンマ線(3248個)で変異処理したコロニーを窒素源を含まない固体培地で培養したところ,それぞれ19および16株が生育に異常を示した.よりはっきりした表現型を示した12株(N3H4,N4H4,N6F4,N7C9,N9D9,N10E6,G26C1,G23C4,G17D5,G23D3,G21E10)について詳細な特徴づけをおこなった.G1G7株を除いた11株は窒素を含まない液体培地で生育せず,窒素固定活性(アセチレン還元活性)も示さなかったため,窒素固定に関わるなんらか遺伝子が変異していると考えられた.窒素非存在下でベシクルの観察を行った結果,ベシクルを分化しない株がいくつか見つかった.RT-PCRにより窒素固定関連遺伝子の発現を調べたところ,いくつかの変異株でnif遺伝子の発現が減少していた.N3H4,N10E6,G21E10,G23C4株では窒素固定能が回復した復帰変異株を単離することができた.これらのゲノム解析を行うことで原因遺伝子が特定できると期待される.