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演題詳細

P-161:
深部地下油層環境における生物的原油分解メタン生成メカニズムの解明
○眞弓 大介1, 玉澤 聡1, 玉木 秀幸1, 鎌形 洋一1, 坂田 将1, 五十嵐 雅之2, 若山 樹2, 前田 治男2, 米林 英治2, 飯田 剛史3, 大阪 典子3 1産総研, 2INPEX, 3東京ガス mayumi-daisuke@aist.go.jp
【目的】近年、革新的な原油増進回収技術として枯渇油田に生息する微生物を活用した残留原油のメタン変換・回収技術が注目されている。その技術開発を達成するためには、深部地下油層環境における原油分解メタン生成反応のメカニズムを理解する必要がある。そこで今回、我々は国内油田から採取した油層試料を用いて、原位置の原油分解メタン生成ポテンシャルを評価する地球化学的分析および原位置環境を模擬する高温高圧培養実験を行うことで、深部地下油層環境の原油分解メタン生成メカニズムの解明を試みた。
【方法】国内深部油田から油層水と原油、ガスを採取し、地球化学的分析として油層水中のイオン組成や原油の炭化水素組成、ガス状炭化水素や二酸化炭素の炭素同位体比を分析し、原位置の原油分解メタン生成ポテンシャルを評価した。一方で、採取した油層水と原油を用いて現場油層環境と同じ温度圧力条件の高温高圧培養実験を実施し、原位置の原油分解メタン生成反応を実験室で再現した。
【結果】地球化学的分析の結果、当該油層環境は硝酸塩や硫酸塩などの電子受容体が枯渇し、原油の炭化水素成分やガス状炭化水素や二酸化炭素の同位体比から、原油炭化水素中の特に芳香族炭化水素が生分解を受けたメタン生成を伴う原油分解反応の兆候が観察された。一方で、現場油層環境を模擬する高温高圧培養実験では、原油を唯一炭素源として計3度の継代培養(全培養日数:1000日)を行うことで、原油中のトルエンを分解するメタン生成微生物コミュニティーの獲得に成功した。当該微生物コミュニティーの群衆構造解析の結果、未培養のFirmicutes門細菌やCa. Atribacteria門細菌、Ca. Cloacimonetes門細菌が優占し、メタン生成菌としては水素資化性メタン生成菌や酢酸資化性メタン生成菌が検出された。
【考察】本研究では、地球化学的に原油分解メタン生成ポテンシャルが観察された油層試料を用いて現場油層環境を模擬する培養実験を実施することで、原位置の原油分解メタン生成反応を実験室で再現することに成功した。さらに、獲得したトルエン分解メタン生成微生物コミュニティーは複数種の未培養細菌で構成されており、深部地下油層環境ではこれらの細菌とメタン生成菌によるsyntrophic networkを介した原油分解メタン生成反応が進行していることが示唆された。
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