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演題詳細

P-167:
硫酸塩・Fe(III)還元を伴う嫌気的トルエン分解微生物群集の構造解析
○佃 怜奈1, 牧 大智1, 高見澤 一裕2, 中村 浩平2 1岐大・院応生科, 2岐大・応生科 v8121024@edu.gifu-u.ac.jp
 石油はエネルギー源や化学製品の原料として広く用いられており、我々の生活に欠かせない存在である。一方で、多量の石油の生産と消費に伴い、原油の採掘・輸送・精製過程からの流出や漏出などによる環境汚染が数多く発生している。環境中に漏出した石油系炭化水素は、直接摂取することによる生体への有毒性のほかに、油膜や油臭を引き起こすことから、生活や経済活動の支障となる。石油由来の芳香族化合物の中でも毒性と地下水への拡散のしやすさから、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン(総じてBTEX)は、土対法や化管法の対象物質である。BTEX汚染の浄化法としてバイオレメディエーションが挙げられる。特に、嫌気環境でBTEXを分解する細菌はin situでの浄化に効果的であると考えられ、それらの細菌の応用のためにより多くの知見が必要である。本研究では、原油湧出地の微生物群集に注目し、トルエン存在下で異なる電子受容体条件下で培養した微生物群集構造を比較し、嫌気的トルエン分解機構の解明を試みた。
 原油湧出地の泥を植菌源に、電子供与体としてトルエン、電子受容体に硫酸塩またはFe(III)を添加した嫌気的トルエン分解培養系を構築した。それぞれの電子受容体条件下でトルエンと硫酸塩の減少およびFe(II)の増加を確認した。培養系からDNAを抽出し、MiSeqによるメタ16S rDNA解析および嫌気的トルエン分解の初発反応に関わる機能遺伝子bssA (ベンジルスクシネートシンターゼαサブユニット)を標的としたクローンライブラリー解析を行った。メタ16S rDNA解析の結果、硫酸塩添加系では硫酸塩還元トルエン分解細菌として報告されているSyntrophobacteraceae科細菌、Fe(III)添加系ではGeobacter属細菌がそれぞれ優占種(総リードあたり57、83 %)であった。一方bssA遺伝子では、硫酸塩、Fe(III)添加系ともにGeobacter属細菌由来の遺伝子が多数を占め(総クローン数あたり71、100 %)、それぞれの配列は99 %相同であった。したがって両系ともにGeobacter属細菌がトルエン分解の初発反応を担うと推定されるが、硫酸塩添加系のGeobacter属細菌の16S rDNAの割合は0.7 %未満であった。これらの事実から、存在量の低いGeobacter属と優占種であるSyntrophobacteraceae科細菌の連携による硫酸塩還元を伴うトルエン分解が考えられた。更に両系で未培養Betaproteobacteria綱細菌の16S rDNAが検出され、本菌のトルエン分解への関与が示唆された。
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