Imgheader01

第31回大会ホームページへ

演題詳細

P-166:
嫌気的従属栄養性鉄酸化細菌の集積培養
細田 晃文, ○加藤 明穂, 井本 舞, 田村 廣人 名城大・農 hosoda@meijo-u.ac.jp
これまで研究されてきた鉄酸化細菌は好酸性が多く,空気酸化との競合に依存しない中性環境で増殖する鉄酸化細菌の単離例はそれほど多くない。また,2価鉄はその性質から嫌気的環境下では電子供与体となり得ることも知られている。本講演では,中性環境で塩化鉄を基質とした嫌気的従属栄養性鉄酸化細菌の集積培養について報告する。鉄酸化細菌の接種源として製鉄会社から排出される含油スラッジ(5%油分含有)を用いた。オートクレーブ滅菌したGeobacter培地(1 mM KH2PO4, 10 mM NH4Cl, 1 mM MgCl2・6H2O, 1 mM CaCl2・2H2O, 30 mM NaHCO3, 1 mM Na2SO4)30 mLを含むブチルゴム栓付きバイアルに含油スラッジ10 gを接種し,静置培養した。鉄酸化細菌の増殖基質には,含油スラッジより抽出した酸化鉄0.5 gおよび酢酸(10 mM酢酸ナトリウム相当)を電子供与体とした。3価鉄沈殿が認められた培養液を10% (v/v)ずつ継代し集積培養を行った。また,鉄酸化細菌の純化を目指し上記の培地にて電気化学的培養(MEC:培地200 mL,接種源10%,22℃)を行った。MECによって得られた細胞は,PAFe2N2培地(5 mM NaNO3, 5 mM FeCl2, 5 mM CH3COONa, 0.6mM CaCl2, 0.2 mM KCl, 0.5 mM MgCl2, 1.0 mM NH4Cl, 0.1 mM KH2PO4, yeast extract 25 mg/L)を用いて再度,液体培養した。集積培養などの細胞増殖に伴う2価鉄の酸化量は,o-フェナントロリン法にて,酢酸の減少は電気伝導度計付きHPLCにて継時的に定量した。また,16S rDNAに基づく変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)により,集積培養液およびMECの鉄酸化に関わる細菌群集を解析した。塩化鉄(II)を用いた集積培養およびMECにより酢酸を資化するのと同時に2価鉄を酸化する嫌気的な集積培養物を得た。培養12日間における2価鉄の酸化率は0.29 mM/日で,この時の酢酸は1.1 mM資化され,pHの上昇が認められた。集積培養液およびMECのDGGE解析から,鉄酸化に関わる細菌は,硝酸依存性の嫌気的鉄酸化細菌として報告があるAcidovorax属に近縁(99%相同性)であることが明らかとなった。今後は,この菌株の単離と生理的特性解析を行う予定である。
PDF