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演題詳細

P-165:
異化的ヒ酸還元細菌によるヒ素ストレス応答機構の発現解析
○土屋 達哉1, 笠原 康裕2, 濱村 奈津子3, 天知 誠吾1 1千葉大院・園芸, 2北海道大・低温科学研究所, 3九州大・理学研究院
近年、微生物によるヒ酸[As(V)]から亜ヒ酸[As(III)]への還元反応が、帯水層などのヒ素汚染の原因であることが明らかになってきた。我々はヒ素汚染の原因菌の1つとして、国内水田土壌より異化的ヒ酸還元細菌Geobacter sp. OR-1の単離に成功している。このような細菌は、ヒ素ストレス下で特異な応答機構を発現すると予想されるが、網羅的な解析例はこれまでほとんどない。そこで本研究では、OR-1株がヒ素存在下で発現するタンパク質を同定することを目的として、プロテオーム解析を行った。また、異化的ヒ酸還元酵素に対し、転写解析、酵素活性測定を行い詳細な解析を試みた。
OR-1株を酢酸を炭素源、ヒ酸またはフマル酸を最終電子受容体として嫌気的に生育させた。プロテオーム解析では、全タンパク抽出を行い1D SDS-PAGEとLC-MS/MSを用いてタンパク質を同定した。ゲノムワイドで定量的な解析法を行うため、emPAIに基づいたラベルフリーな半定量的なプロテオーム解析アプローチを用いた。ヒ酸とフマル酸生育条件下でのプロテオーム解析において、それぞれ985個と831個のタンパク質が同定された。ヒ酸生育条件下では、フマル酸生育時と比較して、異化的ヒ酸還元酵素ArrABが高い発現量を示し、Arrの活性中心molybdopterinの生合成系や亜ヒ酸排出に関わるArsAの発現上昇も見られた。また、抗酸化酵素(peroxiredoxin, rubrerythrin, rubredoxin)、ストレス応答(UspA, Hsp90) 、folding関連タンパク質(SurA)、分子シャペロン(ClpB, DnaJK, GrpE)などの発現上昇が確認された。ヒ酸生育時には、ヒ酸のアナログであるリン酸のtransporter関連タンパク質の発現上昇が見られ、硫黄代謝経路の活性化、特にthiol基の再形成に関わる酵素が発現上昇していた。これは、亜ヒ酸とthiol基の親和性が高いことに関連すると考えられた。また両生育条件下においてRNAを抽出しRT-qPCRを行った結果、ヒ酸生育条件下においてarrAの発現量がフマル酸生育条件下と比べて約37倍に上昇していることが確認された。さらに静止菌体を用いたヒ酸還元酵素活性測定より、ヒ酸生育条件下においてフマル酸生育条件下に比較して、7.57倍の酵素活性が認められた。
以上の結果から、OR-1 株は高濃度のヒ素に曝露されることで、異化的ヒ酸還元酵素を中心として、抗酸化酵素、分子シャペロンなどを協調的に発現上昇させ、ヒ素耐性を獲得することが示唆された。
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