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演題詳細

P-184:
偏性共生細菌ゲノムにおける進化選択圧の解析
○金城 幸宏1,2, 本郷 裕一1, 徳田 岳3, 大熊 盛也2 1東工大・院生命理工, 2理研BRC・JCM, 3琉大・熱生研
一般に、共生細菌が宿主との関係性を偏性化していく進化過程で、そのゲノム構造に大きな変化が生じる。例えば、ゲノムサイズが極端に小さくなることや塩基組成がATに大きく偏ることなどがその代表である。これについては、共生体が宿主間を伝播する際に生じる集団構造の縮小により遺伝的浮動が促進されたことが主要因であるとの仮説が広く支持されている。実際にこれまで多くの研究では、偏性共生細菌ゲノム内のコード領域における同義置換率と非同義置換率の比(dN/dS)が他の自由生活性細菌と比較して有意に高いと推定されており、偏性共生細菌ゲノムの進化過程における遺伝的浮動の優占が示唆されている。しかし、これらの結果はdN/dSの推定に内在する多くの方法論的および生物学的な問題点を無視して行われたものであり、再検討する必要がある。本発表ではまず、dN/dS推定における時間依存性などの諸問題について概説する。それらを踏まえた上で、これまでの偏性共生細菌ゲノム進化の解析において多くの推定バイアスが生じたことを示す。結果、我々の行った推定では、偏性共生細菌と自由生活性細菌との間にはゲノム全体のdN/dS推定値に有意な差は見られなかった。これらの結果は、これまで主張されてきた偏性共生細菌における遺伝的浮動の優占がゲノム進化を駆動したとする仮説を支持する結果には一般性がなく、共生関係の偏性化に伴う選択圧の変化が上述のような極端なゲノム構造の進化に大きく貢献したことを示唆している。
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