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演題詳細

P-186:
アワビ消化管より単離されたArcobacter属細菌のゲノム解析による機能解明
○水谷 雪乃1, 福崎 智司1, Cleenwerck Ilse2, Bossier Peter2, Vandamme Peter2, 田中 礼士1 1三重大院生資, 2ベルギー・ゲント大 515M321@m.mie-u.ac.jp
【目的】これまでEpsilonproteobacteria綱に属するArcobacter属細菌はヒトをはじめとする陸生生物の病原細菌として報告されてきたが、海洋性無脊椎動物から単離されている種にはそのような報告は無く、むしろ共生関係が示唆されている。以前に本学会(2013年秋季大会)にて、メガイアワビ消化管内から、非常に多様なArcobacter属細菌由来の16S rRNA遺伝子を確認したと同時にFISH解析により、多数の細菌細胞が存在している事を報告した。その後これらの細菌群の単離を試みた結果、偶然的に新規Arcobacter属細菌としてMA5株の単離に成功し、本菌の分類学的検討を日本水産学会(2015年秋季大会)にて報告した。しかし、未だ本菌の生理的機能は不明な点が多く、宿主との関係性も謎のままである。そこで、本菌のフルゲノム解析によって保有遺伝子を解明し、これらの細菌と宿主との関係性を明らかにする。
【方法】MA5株を大量培養し、遠心分離により集菌後、Marmur法によりDNAを抽出した。シーケンス用ライブラリを作成後、HiSeq 2500システムを用いて塩基配列を決定し、得られたリードからEdenaによるアッセンブル行程を行った。その後、RASTサーバーを用いて、得られたドラフトゲノムの塩基配列のアノテーションを行った。
【結果】アッセンブルの結果、コンティグ数は91となり、合計で3,490,832リードの塩基配列が得られた。アノテーションの結果、MA5株は乳酸や酢酸資化に必須な遺伝子を持つことが明らかになった。またTCA回路に関与する遺伝子は、Succinyl-CoA ligase遺伝子以外は検出され、rTCA回路に関与する遺伝子が一部検出された。他にみられた特徴的な遺伝子群としては、自由生活型のEpsilonproteobacteria綱でみられる硫黄酸化遺伝子群(sox)や、水素酸化遺伝子群(hya)を保有していた。さらにゲノム情報が公開されているArcobacter属細菌の中でも、MA5株は脱窒に関する遺伝子の数が多く、複雑な経路を有する事が示唆された。また今回検出されなかった遺伝子は、コンティグ間での欠落が示唆されるため、今後はPCRなどを用いて再度検出し直すと共に、培養法などを用いてこれらの酵素の発現を確認していき、宿主との関係性を明らかにしていく予定である。
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