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Clostridium perfringensはメンブランベシクルを介して宿主免疫応答を誘導する
○永山 恭子1, 尾花 望2, 中尾 龍馬2,3, 泉福 英信3, 中村 幸治2, 野村 暢彦2
1筑波大・院・生命環境, 2筑波大・生命環境系, 3国立感染研・細菌第一
多くの微生物はメンブランベシクル(MV)を生産し、外部環境に放出することが知られている。MVの大きさは一般的に20-500 nmであり、核酸やタンパク質、毒素などを含有することから様々な物質の輸送体として機能していることが明らかとなってきている。MVはグラム陰性菌でその生産が多く報告されている一方、外膜の存在しないグラム陽性菌における報告は少なく、その詳細な機能や形成メカニズムはほとんど明らかにされていない。グラム陽性偏性嫌気性細菌であるウェルシュ菌(Clostridium perfringens)はヒトを含む動物の腸管内に常在し、多くの毒素や細胞外酵素を生産することから食中毒やガス壊疽の原因菌として知られる一方で、腸内細菌悪玉菌の一つとしても知られている。ウェルシュ菌MVが宿主に与える影響を解析するために、マウスマクロファージ様細胞J774.1に添加したところ、IL-6やTNF-αといった各種炎症性サイトカインの放出を誘導することが明らかとなった。MV添加により、マクロファージ様細胞においてグラム陽性菌の細胞壁成分の受容体として知られるToll-like receptor 2(TLR2)の発現が上昇し、TLR2阻害剤によってMV添加時におけるIL-6放出量が減少することが明らかとなった。このことから、ウェルシュ菌MVはTLR2を介して宿主細胞からの各種炎症性サイトカイン放出を誘導することが示唆された。また、ウェルシュ菌Membrane画分をマクロファージ様細胞に添加したところ、MV添加時と比較してTNF-αの放出は同程度に誘導した一方で、IL-6放出量やTLR2発現量が減少したことから、ウェルシュ菌MVはMembrane画分とは異なる炎症性サイトカイン誘導性を示すことも明らかとなった。さらに、ウェルシュ菌MVをマウス鼻腔に接種したところ、血中にはウェルシュ菌特異的IgG抗体、全身の粘膜面(鼻腔、口腔、腸管)にはIgA抗体が生産誘導されることが明らかとなった。以上のことから、ウェルシュ菌MVは宿主の自然免疫および獲得免疫を誘導することが明らかとなった。本研究により、腸内細菌ウェルシュ菌の放出するMVは宿主免疫に大きな影響を与えている可能性が示唆された。