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ヒト腸管ムチンに存在する硫酸還元細菌の探索
ヒト腸管には硫酸還元細菌(sulfate-reducing bacteria, SRB)が常在し、潰瘍性大腸炎等の腸疾患への関与が指摘されているが、SRBのヒト腸管内における生態・生理はほとんど明らかにされていない。本研究では、腸疾患患者由来のヒト腸管ムチンに存在するSRBの培養、単離および培養非依存的検出を試みた。有機酸(酢酸、クエン酸、乳酸)および硫酸塩を含む半合成培地(van der Hoeven et al., 1995)を調製し、腸疾患患者由来の腸ムチン試料を添加後、嫌気条件下、37℃において七日間集積培養を行った。FeSの黒色沈殿が見られた培養液の一部からDNAを抽出し、SRBの機能遺伝子である異化的亜硫酸還元酵素αサブユニット遺伝子(dsrA)に特異的なプライマーを用いてPCR増幅を行ったところ、予測されるサイズ(~1,900 bp)のバンドが確認された。また、同様に16S rRNA遺伝子のPCR増幅およびクローン解析を行ったところ、未培養系統型のDesulfovibrio属(Proteobacteria門)およびDesulfotomaculum属(Firmicutes門)の配列が確認できたが、優勢クローン(~67 %)はEubacterium属であった。一方、複数の腸疾患患者由来の腸ムチンから抽出したDNAを鋳型として行った16S rRNA遺伝子のT-RFLP解析およびクローン解析では、SRBは検出されず、Bacteroides属やParvimonas属が優勢化していた。本研究において、SRBの検出が困難な腸管ムチンからSRBを集積培養できたことから、継続的な培養条件の検討により、新規系統型のヒト腸管由来SRBの単離を目指したい。