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演題詳細

P-210:
MiSeqを用いたヒト毛髪に付着する細菌群集構造解析
○渡邉 康太1, 西 英二2, 田代 幸寛1, 酒井 謙二1 1九大院・生資環, 2大分県・科捜研 kobutin52@gmail.com
【背景・目的】
ヒトの皮膚,腸内などには多様で個人に固有の細菌群集構造が存在することが知られている.我々は先行研究により,ヒト毛髪にも固有の細菌群集構造が存在し,Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism (T-RFLP)法を用いることで,個人を識別できる可能性を報告している.(西ら,日本微生物生態学会第30回大会,2015)しかしながら,T-RFLP法では細菌群集構造の系統分類情報を得ることはできないことから,本研究ではヒト毛髪に付着する細菌群集構造をMiSeqを用い,詳細に解析することを目的とした.【実験方法】
被験者2名(日本人男性)から毛髪の提供を受けた.次に,毛根を含めない毛幹部を用いた毛髪サンプルより細菌DNAを抽出し,qPCRにて毛髪1 cm当たりのコピー数を測定した.その後,PCR法にて16S rRNA遺伝子のV4領域を増幅し,MiSeq (Illumina社)にてシーケンスを行った.得られたデータをUSEARCH,QIIMEを用いてOTU (97%)レベルでの解析を行った.検討項目として,被験者間,保存の影響,頭部の部位間(前髪,頭頂部,後髪,右側頭部,左側頭部),1本中の部位間(先端部,中間部,後端部),洗浄の影響(milli Q,界面活性剤),色の有無(白髪,黒髪)について検討した.各項目につき毛髪を3本ずつ採取し,解析した.【結果・考察】
qPCRの結果,毛髪1 cmあたり平均104 copiesの細菌が存在することが示された.次に,MiSeqによる細菌群集構造の解析の結果,被験者間でα多様性とβ多様性の両方で有意差が確認された.共通する優占属としてPseudomonas属が検出され被験者間でPropionibacterium属とDietzia属の占有率に違いが見られた.また, 採取後1ヶ月常温保存した毛髪ではコピー数に差はなかったが,α多様性が保存後では減少し値はバラつき,β多様性においても有意差が確認された.よって,常温保存期間中に,細菌群集構造は不安定で変化することが示唆された.今後被験者を増やし男女間,年齢の違いによっても異なるかどうか解析する予定である.
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