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演題詳細

P-211:
桧原湖北部に存在する大腸菌のlacZ部分塩基配列に基づいた由来の推定
○野田 真優子1, 奥田 圭2, 難波 謙二3 1福島大・院理工, 2福島大・環境放射能研究所, 3福島大・理工 s1010143noda@gmail.com
【目的】本研究では桧原湖北部に存在する大腸菌の由来の推定を行うことを目的とし,桧原湖北部と温血動物の腸管に存在する大腸菌のlacZ部分塩基配列の遺伝子解析を行った。福島県耶麻郡北塩原村に位置する桧原湖は,糞便汚染の指標菌である大腸菌群数が環境基準値(1000 MPN/100 ml)を超過している湖の一つである。大腸菌群は自然環境中に普遍的に存在するものも含まれており必ずしも糞便汚染を反映しているものではないが,桧原湖湖内ではより信頼性の高い糞便汚染の指標菌である大腸菌も検出されていることから糞便汚染が懸念される。しかし,桧原湖北部周辺地域の下水道加入率は8割を超えており一概に集落が原因であるとは考えにくい。大腸菌の表現型や遺伝子型により,大腸菌の宿主を推定する方法がいくつか報告されているが,その中でも標的遺伝子の塩基配列を比較する方法を用いて由来の推定を試みた。【方法】桧原湖北部湖内とその流入河川,解剖から得たイノシシ,ハクビシン,タヌキの直腸内容物,桧原湖北部流入河川周辺に落ちていたキツネ,テン,クマの糞から分離した大腸菌を対象に遺伝子解析を行った。菌の分離はBGLB発酵管法を用いて大腸菌群の計数を行った後の最高希釈段階の陽性管からと,Colilert®で大腸菌陽性となったウェルから行った。菌の同定にはAPI20Eを用いた。遺伝子解析はPCR法を用いてlacZの264 bpの部分配列を増幅し,精製したのちに塩基配列を決定した。末端付近の不明瞭な配列を除き240 bpについて塩基配列の比較を行い,配列の種類ごとに名前を付けグループ分けを行った。【結果】データバンクから得たヒト由来大腸菌の塩基配列も含め144株から30グループが得られた。桧原湖北部の東側から分離された多くの菌株がA1グループであり,西側とは異なる傾向を示した。東側に存在したA1,A3,A4グループは複数の哺乳類から得られたグループであった。ヒトから分離されているA2グループは桧原湖北部の西側に存在した。【結論】桧原湖北部の西側と東側で異なる流入源から大腸菌が流入していることが明らかとなった。また,桧原湖北部の西側の河川は集落の影響を受けている可能性がある。東側から分離された大腸菌の流入源を明らかにするには,さらに大腸菌を識別するため解析を行う部位を増やす必要があると考えられる。
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