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演題詳細

P-217:
放線菌Frankiaの細胞表層多糖の変化が窒素固定と共生に及ぼす影響
○九町 健一1, 白石 隼大1, 小川 誠也1, 堅持 智博1, 飛鳥井 滉也2, 金城 伶2, Normand Philippe3, 橋本 雅仁1 1鹿児島大・院理工, 2鹿児島大・理, 3University Lyon 1 kkucho@sci.kagoshima-u.ac.jp
Frankiaは窒素固定を行う多細胞放線菌である。ハンノキやグミに代表される8科200種以上の樹木の根(根粒)に共生することもでき、貧栄養土壌でそれらの樹木の生育を助ける。私たちは、30年以上液体培養で継代されたFrankia alni ACN14a株の細胞を固体培地で培養したところ、形状の異なるコロニーを形成する2種類の細胞が混在することを発見した。A型(ambiguous edge)は菌糸が放射状に伸長して輪郭がぼやけたコロニーを形成し、S型(sharp edge)は菌糸の伸長がコロニーの縁で抑制され明瞭な輪郭を示した。両型の細胞の表層多糖の単糖組成を調べたところ違いが見られたことから、コロニー形状の違いは、バクテリアでしばしば報告されるように、細胞表層多糖の構造の相違に起因すると予想された。これらの細胞を宿主植物Alnus glutinosa(セイヨウヤマハンノキ)に接種したところ、双方でほぼ同じ数の根粒が着生した。しかし、S型を接種した植物は窒素固定活性が大きく低下していた。加えて、S型の細胞はA型の細胞と比較して、窒素源を含まない液体培地での生育も遅かった。以上の結果から、Frankiaの細胞表層多糖は、共生および非共生の双方の状態の窒素固定において何らかの役割を担うと考えられた。2系統のS型と1系統のA型のゲノム配列を解析した結果、S型が特異的に持つ突然変異が複数見出され、これらがS型で観察された表現型の原因である可能性が考えられた。
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