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ジャガイモ葉から分離されたMethylobacterium属細菌の多様性
○染谷 信孝1, 海野 佑介2, 諸星 知広3, 窪田 昌春1
1農研機構・野菜花き研, 2環科技研・環境影響研究部, 3宇都宮大院・工・物質環境
Methylobacterium属細菌は植物共生細菌として知られており、植物の生育促進能や病害抵抗性誘導能を有する菌株が報告されている。本属は、宿主植物における種レベルでの特異性があり、宿主植物によっては優占種が地理的要因に左右されないという報告があるが、これまでジャガイモにおいては地理的要因の影響は調査されていない。ジャガイモ(品種マチルダ)の種芋を、北海道、山形県、茨城県、広島県及び長崎県で慣行栽培し、開花期の葉を採取した。各葉サンプルからメタノール含有AMS培地で100株ずつPPFM(Pink-pigmented facultative methylotroph)を分離した(供試種芋からPPFMは検出されなかった)。16S rRNA遺伝子配列の相同性から、分離株は全てMethylobacterium属細菌と推定された。続いて16S rRNA遺伝子配列を用いて系統的多様性を評価し、クラスタリング解析(97%類似性)した結果、分離株は16個のOperational Taxonomic Units (OTUs)に分かれた。北海道、山形、茨城、広島及び長崎の各サンプルから検出されたOTU数はそれぞれ、4、5、8、5及び6であった。全5地域から共通して検出されたOTUはM. goesingenseと高い相同性を示し、北海道(84.7%)及び山形(66.0%)で最優占であった。その他、北海道を除く4地域から検出されたOTUは、M. aminovoransと高い相同性を示し、広島(46.9%)及び長崎(58.2%)で最優占的であった。茨城サンプルで最優占であったOTU(35.4%)はM. adhaesivumと高い相同性を示した。地域特異的に検出されたOTU数は北海道、山形、広島及び長崎で各1ずつ、茨城で3であった。各OTU代表菌株の特性を比較した結果、バイオフィルム形成能やアシル化ホモセリンラクトン等の産生能に差が認められた。ジャガイモの場合、栽培地域によって葉のMethylobacterium属の優占種が変動すると考えられた。