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海洋細菌ゲノム上でマクロライド耐性遺伝子mef(C)-mph(G)を担うICEの解析
【背景と目的】細菌は薬剤耐性遺伝子(Antibiotic resistance genes, ARGs)の獲得により耐性化することが知られている.さらにARGsはプラスミドやIntegrative conjugative element(ICE)などの可動性遺伝因子(Mobile genetic element, MGE)上に存在することも多く,細菌群集間で水平伝播する.愛媛県の養殖マダイ腸内から単離したエリスロマイシン耐性株(6JANF4-E-4)は,新規マクロライド耐性遺伝子であるmef(C)-mph(G)を保有し,かつSXT R391 family ICE(SRI)typeのMGEを持っていることがわかった.SRIは様々なARGを運ぶため,疫学的観点からも重要なMGEであるが,過去にマクロライド耐性遺伝子を担ったという報告例はない.そのため,6JANF4-E-4が保有するSRIは,既知のものと違う遺伝子カセットを有している可能性がある.本研究では,新規マクロライド耐性遺伝子を運ぶ遺伝子カセットを明らかにし,水圏環境中におけるMGE間の組み換え機構の解明を目的とした.【結果と考察】PacBio RS IIを用いた次世代シーケンスにより得られたリードをHGAP3によってアセンブルした結果,5つのコンティグが得られた.16S rDNAの配列から,6JANF4-E-4はShewanella halifaxensisに近縁であることが明らかとなった.また,1つのコンティグ上に,SRIの骨格領域が存在しており,これがmef(C)-mph(G)を担っていることが確認された.mef(C)-mph(G)の周辺には, sul2とfloRの二種類のARGが存在していた.さらにその外側にはtransposaseが存在していた.この領域は,プラスミドpAQU1上のmef(C)-mph(G)周辺の類似する領域(8705 bp)と,塩基配列で98%の相同性を示した.6JANF4-E-4が単離された現場海域では,過去にpAQU1-likeのプラスミドが検出されていることから,mef(C)-mph(G)および周辺領域は,遺伝子カセットとして様々なMGE間を組み換えによって移動していることが示唆された.【結論】mef(C)-mph(G)を含む新規の遺伝子カセットは,様々な MGE上に存在することが明らかとなった.これはARGsが環境中に広く残存する機構の一つであると考えられる.