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演題詳細

P-241:
飢餓状態の菌および貧栄養環境での遺伝子水平伝播
○香山 義明, 鈴木 聡 愛媛大・院農 d653005a@mails.cc.ehime-u.ac.jp
[背景と目的] 薬剤耐性遺伝子(Antibiotic Resistance Genes, ARGs)は、水平伝播(Horizontal Gene Transfer, HGT)によって細菌群集中で拡散する。同じARGsが世界中に広く分布している事例や、ヒトの病原菌と海洋細菌に同じARGsが見つかることなどは、HGTが人獣病原体と海洋細菌の間で起こっていることを示唆する。しかし、海水中に存在するARGsが人間生活圏へ侵入するリスクは不明である。今までは、HGTの研究のほとんどは、富栄養条件下で生育させた中温細菌で研究されてきた。海洋の場合は有機物濃度が低い貧栄養環境であるが、このような環境でのHGTについては報告の例は少ない。海洋環境からのARGs暴露リスクの評価には、貧栄養条件下でのHGT実態を知る必要がある。本研究では飢餓細菌および貧栄養条件下でのHGT頻度を定量することを目的とした。[方法] ARGsの供与菌(D or d)には海洋由来のPhotobacterium株を、受容菌(R or r)には大腸菌株を用いた。細菌を飢餓状態にするために、滅菌した人工海水またはPBSに細胞を懸濁し、供与菌、受容菌をそれぞれ25℃および37℃で6日間放置した。この飢餓細菌(d or r)と、富栄養条件下で培養した細菌(D or R)との間でフィルターメイティング法を用いて、有機物が豊富なMB培地(富栄養環境)と有機物を含まないPBS培地(貧栄養環境)の二つの環境下でHGTを行わせ、その頻度を比較した。ARGsを受け取った受容菌transconjugant (TJ)はtetracycline 20 μg/mLを含むLB培地上に生育したコロニー数を測定し、tet(M)の伝達をPCRで確認した。[結果] 陽性対照区D→Rでは、貧栄養環境下での伝達は富栄養環境下の伝達率の77.4%と低い傾向がみられた。富栄養環境のd→rでは53.4%を示し、率は低下したが有機物栄養が豊富であれば飢餓菌どうしでもHGTは起こることが明らかになった。また、富栄養環境下でd→RではD→Rの約12倍伝達率が高かった。飢餓供与菌(d)は有機物栄養を得ると、HGT能を活性化するのかもしれない。以上から、HGTは外洋のような貧栄養環境よりは、養殖場付近や排水が流れ込むような有機物豊富な場所のほうが高率に起こりうると考えられた。
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