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演題詳細

P-242:
カンキツかいよう病菌に感染する大型ファージXacN1のゲノム解析による特徴づけ
○吉川 元貴1, Romain Blanc-Mathieu1, 緒方 博之1, 山田 隆2 1京都大・化研・バイオインフォマティクスセンター, 2広島大・院・先端物質科学研究科・分子生命機能科学専攻 yos@kuicr.kyoto-u.ac.jp
ファージにより病原性細菌を制御する技術(ファージセラピー、ファージバイオコントロール)への関心が高まっている。農業分野でも化学農薬に代わる持続的サポート技術として開発が進んでいる。カンキツかいよう病は、カンキツ類における深刻な感染病の一つであり、果実、葉、枝などに発生する。感染すると、被害果実の商品価値が低下すると同時に、落葉や枝枯れが生じ、樹が衰弱する。従来の化学農薬(銅剤)は、環境汚染や残留農薬などが問題となっているため、安全な代替農薬・防御技術の開発が望まれている。XacN1は、カンキツかいよう病の病原菌Xanthomonas citri(syn. X. axonopodis pv. citri, X. campestris pv. citri)に高い特異性を示す天敵ファージであり、ファージバイオコントロールに有用であることが期待される。電子顕微鏡による観察で、XacN1は直径約140nmの正二十面体頭部と145nmの伸縮性尾部から成る、大きなmyovirus型粒子を示した。また、XacN1の二本鎖DNAゲノムは、約384kb(G + C = 50%)であり、これは、配列決定されたファージのゲノムの中でBacillus phage G (497 kb)に次ぐ二番目の大きさである。本研究では、XacN1の特徴を明らかにすることを目的とし、ゲノム解析を行った。ORFの推定により、XacN1のゲノムは約590個のタンパク質遺伝子をコードすることが予測された。DNA複製系のタンパク質が多く見つかったほか、いくつかのタンパク質は宿主との特異的相互作用への関与が示唆された。さらに、構造タンパク質を用いた系統解析により、XacN1の進化的起源を推測した。また、ファージとしては非常に多い50個以上のtRNAをコードすることが予測された。XacN1のゲノムには末端に約65 kbの重複が存在しているが、tRNAは全てその配列部分にコードされていた。XacN1にコードされるtRNAは重複を含みつつも、配列決定されたファージの中では最も多い。本発表では、これまでの解析結果について報告する。
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