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演題詳細

S5-2:
アメーバに感染する巨大DNAウイルスから生命進化を読み解く
○武村 政春1,2, 三上 達也2, 室野 晋吾2 1東京理科大・理, 2東京理科大・院科学教育 takemura@rs.kagu.tus.ac.jp
【背景・目的】2001年、大型DNAウイルスが細胞核の起源に関わったとする仮説が、TakemuraとBellにより発表された。2003年、アメーバに感染する巨大ウイルス(GV)APMVが発見され、それが細胞核と形態的類似性を持つウイルス工場を細胞質に形成することが明らかになると、この仮説は注目され始めた。やがてForterreらにより細胞核の起源とウイルス工場との関係に言及がなされるようになり、真核生物進化とGVとの関係が本格的に議論されるようになった。そこで我々は、GVと真核生物の進化的関係の解明を目的として、(1)B型DNA polymerase(pol)を用いた分子系統学的解析と(2)真核生物進化とのより緊密な接点を持つ新規GVの単離を目指した研究を行ってきた。
【成果1】4種類(α、δ、ε、ζ)の真核生物polのGV polとの近縁度はδが最も高く、ζ、α、εの順に低くなることがわかった。GVの仲間であるPoxviridaeのpolは、α、εと近縁度が高い傾向にあることもわかり、真核生物polはε→α→ζ→δの順に徐々に獲得されてきたことが示唆された。これらと近縁なpolをGVが持っている理由が、遺伝子水平移動によって真核生物から得たからか、GVが獲得したものが真核生物へと移動したからかは不明だが、GVの感染、増殖機構の解明が、GVと真核生物の進化的関係の解明に重要であることは示唆された。
【成果2】現在までに数種類の新規GVを単離した。荒川から単離したTokyovirusのゲノム解析により、これがMarseilleviridaeに属すること、欧州や豪州、アフリカから単離されたMarseilleviridaeとは異なる系統を持つことが明らかとなった。一方日本の淡水、海水から単離したOrigamivirusのゲノム解析により、これがMimiviridae subgroup Aに属することが明らかとなった。subgroup Aでは、欧州で単離されたAPMV、ブラジルで単離されたSambavirus、そしてOrigamivirusのゲノムが極めてよく似ていることから、subgroup Aの世界規模の地域的差異はほとんど存在しないと考えられた。このことは、subgroup Aの進化速度が極めて遅いか、地位的差異を帳消しにするウイルス粒子の大規模循環系の存在を意味していると考えている。
【展望】今後は、アメーバ以外の真核微生物を宿主とするGV研究も重要になってくるだろう。未知のGV単離の試みは、未知の微生物・ウイルス相互作用にメスを入れ、生命進化に対するGVの関わりの謎に満ちた部分を洗い出すことになるに違いない。
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