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演題詳細

S5-4:
ヘリコバクター・ピロリのヒトとの共進化から紐解く共生から病原性へのパラダイムシフト
○山岡 吉生1 1大分大・医, 2Dept. Med. Gastro, Baylor Coll. Med. yyamaoka@oita-u.ac.jp
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)がヒトの胃粘膜に炎症を引き起こし、消化性潰瘍の発症に深く関与すること、さらに胃癌の大部分がピロリ菌感染を基盤に発生することは、明らかである。しかし感染者のほとんどが胃癌にならずに一生を終え、また胃癌の発症率にかなりの地域差があるのも事実である。さらに、欧米の一部の国やアフリカ諸国ではピロリ菌感染率が高いにもかかわらず、胃癌の発症率は、東アジア諸国に比べかなり低い。さらに同じ東アジア内でも、南方にいくほど胃癌の発症率は低くなる。これらの理由を説明できる因子として、ピロリ菌の病原性の多様性が注目を浴びている。ピロリ菌は6万年以上前からヒトと共進化を行い、世界各国において異なる遺伝子型を形成し病原性も多様化してきた。ピロリ菌の遺伝子はヒトのそれに比べ突然変異率が高いので、特に短期間(数千年~数万年)における詳細な変化を知ることができる。複数遺伝子の塩基配列からピロリ菌を分類する手法:MLST(Multilocus Sequence Typingや次世代シーケンサーによる全ゲノム解析により、徐々にピロリ菌とヒトの共進化の詳細が明らかとなり、単にピロリ菌がヒトとともに、アフリカを起源として、世界中をどのように移動してきたか、という人類学的な見地が明らかになってきたのみならず、移動の中で獲得した病原性についても明らかになりつつある。今回は、ピロリ菌とヒトとの共進化から紐解ける様々な事項について概説する。
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