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演題詳細

S6-1:
細胞性粘菌の濃度勾配センシングと走化性運動
○上田 昌宏1,2 1大阪大学大学院生命機能研究科, 2理化学研究所生命システム研究センターQBiC masahiroueda@fbs.osaka-u.ac.jp
細胞の走化性応答は様々な生物で重要な役割を持っており、例えば、免疫系において感染や炎症が起こった際に白血球が集まってくる応答も走化性の例の一つである。真核生物の走化性の分子メカニズムは、細胞性粘菌Dictyostelium discoideumでもっともよく理解されている。粘菌細胞は野外ではバクテリアを食べて生きているが、周りに餌がなくなると自らcAMPを細胞外に分泌し、その濃度勾配に応答して互いに集まって多細胞体を形成する。その際、粘菌細胞はわずか数%程度の緩やかな濃度勾配を10万倍にも及ぶ広い濃度域にわたって走化性応答を示すことができる。誘引物質の濃度勾配センシングはGPCR型受容体とそれに共役した三量体Gタンパク質が担っているが、このような広範な濃度域にわたるセンシングのメカニズムはわかっていない。最近、我々は三量体Gタンパク質の制御因子としてGip1(G protein interacting protein 1)を同定し、Gip1が走化性の応答濃度レンジを拡張していることを見出した。gip1遺伝子の破壊株は、低濃度域では濃度勾配を認識できるが、高濃度域においてはその機能を失っており、走化性に異常を示した。また、Gip1はGタンパク質と結合し、Gタンパク質の一部を細胞質に留めていた。誘引物質刺激により受容体が活性化すると、Gタンパク質は細胞質から細胞膜へと移行し、それによって濃度勾配に沿った細胞膜上でのGタンパク質の再配置がおこった。これらの知見から、Gip1はGタンパク質の細胞質―細胞膜間シャトリング(shuttling)を制御することで、走化性シグナル伝達に必要なGタンパク質の細胞膜上での再配置や利用可能な量を調節していることが明らかとなった。このようなメカニズムによって真核生物の走化性でみられる広いダイナミックレンジでの濃度勾配認識が起こる。数理モデルによる濃度勾配センシングのメカニズムの理解も進んでおり、合わせて発表する予定である。
Kamimura, Y., Miyanaga, Y. and Ueda, M. (2016). “Heterotrimeric G protein shuttling via Gip1 extends the dynamic range of eukaryotic chemotaxis.”, PNAS 113: 4356-4361.
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