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演題詳細

P-002:
有機硫黄汚染物質の生分解及びLC/ESI(-)-MS/MSを用いた二硫化物等の代謝産物の評価
○小澤 昂平, 根元 裕規, 菊池 愛美, カナリー ロバート 横浜市大・国総学部・生命環境 i130153c@yokohama-cu.ac.jp
Benzothiazole(以下BTH)は窒素と硫黄、Benzothiophene(以下BT)は硫黄を構造中に含む多環芳香族炭化水素(PAH)である。BTHはゴムの製造工程で加硫促進剤や酸化防止剤として世界中で使用されており、BTは石油やクレオソートの構成要素の一種として知られている。BTHとBTは地表水や土壌中に放出される環境汚染物質であるため、生分解を含むこれらの環境運命を解明することは非常に重要である。そこで本研究ではLC/ESI(-)-MS/MSを用いたSphingobium barthaiiによるBTHとBTのバイオトランスフォーメーションにより生成する代謝産物の同定及び代謝経路の作成を研究目的とした。S. barthaiiはグラム陰性土壌細菌で、先行研究によりPAHを分解することが知られている。S. barthaiiと共に培養した後に抽出した試料をフルスキャンモードで解析した結果、BTHとBTの両方で分子量が広範囲にわたる多数の化合物が検出され、最大のものは364 Daであった。これらの化合物はコントロールでは検出されなかったため微生物による代謝産物であると考えられる。検出した代謝産物をプロダクトイオンスキャンした結果、BTHとBTの両方で芳香環の酸化と開裂が起こり代謝経路下流の単環化合物だけでなく、バイオトランスメーション後の非生物的な反応により高分子二硫化物が生成したことが示された。二硫化物はBTHとBTの五員環が酸化されることにより生成したと考えられる。7つの二硫化物と単環化合物を含む代謝経路下流の生成物を検出し、それらの構造を推定することでBTHとBTの代謝経路を拡張することができた。Dibenzothiopheneでは生分解による二硫化物の生成が報告されてきたが、BTHとBTでは今まで報告されていない。本研究でのバイオレメディエーションによる二硫化物の代謝産物の発見は、BTHやBTの環境運命を予見することに貢献し、環境浄化につながることが期待される。
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