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演題詳細

P-003:
高温度条件がCandidatus 'Accumulibacter phosphatis'群集構造に与える影響
○道中 敦子, 重村 浩之, 山下 洋正 国総研・下水道部 michinaka-a92ta@nilim.go.jp
開発途上国では、先進国に導入されている排水技術を適用するには経済的負担が大きいことから、低コストで排出COD基準値を満たす処理方法が主に開発・導入されているが、一方で、熱帯地域に位置する途上国において都市化が進む地域では富栄養化が問題視され、放流先の水質基準にリンや窒素の栄養塩に関する基準を導入することについて検討されている。このことから、途上国においても今後の発展に伴い下水中の栄養塩除去を視野に入れなければならない。先進国で広く導入されている生物学的リン除去(EBPR)は、ポリリン酸蓄積細菌(PAOs)の代謝機構を利用した下水中からリンを除去する下水処理法である。これまでの知見より、PAOs は20℃以下の低温を好むことが知られており、熱帯地域へ生物学的な下水高度処理技術の導入を考えた場合、高水温条件(25~35℃)が系内微生物群集に与える影響を調べることは不可欠である。しかしながら、高水温条件でのリン除去活性や微生物群集の生態学的情報はほとんどない。そこで本研究では、主要なリン蓄積細菌であると報告されているCandidatus ‘Accumulibacter phosphatis’(以下、Accumulibacter)に着目し、実験室規模EBPRリアクター(容積2Lの連続回分式リアクター)を用いて、高水温条件が群集構造に与える影響を調べた。22℃、25℃、28℃、30℃の温度条件にてそれぞれ70日間以上の運転を行ない、polyphosphate kinase (ppk1)遺伝子を対象とした定量PCRにより、Accumulibacterの各clade(I, IIA, IIB, IIC, IID, IIF)についてその挙動を調べた結果、22℃、25℃運転時では群集構造はほとんど変化しなかったが、28℃運転下においてClade I, IIA, IIBが減少し、Clade IID, IICは維持されていた。Clade IIFは28℃運転条件下で増加傾向が確認された。30℃運転条件下では、いずれも減少したが、その中でもClade IIAとIIBは著しく減少し、30℃運転開始約30日後には検出限界以下となった。以上のことから、Accumulibacterのグループによって温度に対する感受性が異なることが示唆され、比較的高温条件である28℃において、適応可能なものが存在することが明らかとなった。
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