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演題詳細

P-004:
付加体の地下圏微生物によるメタン生成プロセスと分散型エネルギー生産システムの創成
丸林 創1, 荻 祐太朗2, 石川 修伍2, 松下 慎2, ○木村 浩之2,3 1静岡県・危機管理部, 2静岡大・理, 3静岡大・グリーン研
 西南日本の太平洋側の地域は、深さ10 kmを超える厚い堆積層(付加体)によってできている。付加体は、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際、海底堆積物が大陸プレートに付加してできた地質構造である。付加体の堆積層は、海底堆積物に由来することから有機物を多く含んでいる。また、付加体の深部帯水層には嫌気性地下水が蓄えられており、そこには大量の付随ガス(主にメタン)が含まれている。 本研究では、静岡県中西部の付加体(四万十帯の三倉層群;古第三紀に付加した地層)に位置する川根温泉の掘削井(深度1,148 m)を調査した。川根温泉の掘削井は、平成6年から現在まで継続して毎時43立方メートルの地下温水(温泉)と毎時30立方メートルの付随ガスを湧出している。現場では、地下温水の水温、pH、酸化還元電位、電気伝導率を測定した。その結果、深部帯水層は50-60℃と比較的高温であること、嫌気状態にあることが判明した。また、付随ガスの分析を行った結果、80%以上の割合でメタンが含まれていた。次に、地下温水に含まれる微生物群集を対象としたメタ16S rRNA遺伝子解析を試みた。その結果、有機物を分解して水素ガスと二酸化炭素を生成する水素発生型発酵細菌が優占していた。また、水素ガスと二酸化炭素からメタンを生成する水素資化性メタン生成菌も数多く検出された。さらに、地下温水に有機基質を添加した微生物群集の嫌気培養も試みた。その結果、地下温水に含まれる水素発生型発酵細菌が有機基質を分解して水素ガスと二酸化炭素を生成し、その後、水素資化性メタン生成菌が水素ガスと二酸化炭素からメタンを生成する代謝過程を観察することができた。一連の研究結果より、川根温泉の付随ガスに含まれるメタンは、水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌の共生によって、堆積層中の有機物から生成されることが示された。さらに、地下温水を用いた嫌気培養では短時間でメタンが生成されたことから、付加体の深部帯水層の微生物群集は高い活性を有し、現在においても活発にメタンを生成していることが示唆された。 本発表では、島田市(静岡)が進める“川根温泉メタンガス利活用事業”についても紹介する。そして、付加体の地下圏微生物と付随ガスを利活用した分散型エネルギー生産システムについて解説するとともに、その将来展望について考察する。
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