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演題詳細

P-012:
浄水処理における生物活性炭ろ過水中の微生物群集構造の深度方向変化
○鈴木 美有1, 春日 郁朗1, 栗栖 太2, 古米 弘明2 1東大・院工・都市工, 2東大・院工・水環セ yu.suzuki.27@gmail.com
大都市を中心として、オゾン処理と生物活性炭(Biological Activated Carbon:BAC)ろ過処理からなる高度浄水処理が普及している。BACろ過では有機物の吸着と共に、活性炭に付着した微生物による生物処理が進行するが、生物処理に関与する微生物の実体は把握されていない。BACろ過では、活性炭上で増殖活性の高い微生物が増殖・剥離してろ過水に流出し、ろ過水中の微生物数が深度方向に増加することが観察されている。本研究では、複数の浄水場のBACろ過層を対象として、ろ過水中の微生物群集構造の深度方向変化を比較した。
 2015年10月~11月に、国内の4つの浄水場のBACろ過層(BAC-A~BAC-D)から深度方向50 cmごとにろ過水を採水した。ろ過水中の全菌数を計数し、微生物群集構造を16S rRNA遺伝子を標的としたアンプリコンシーケンシングによって解析した。
 いずれのBACろ過層でも、BAC流入水中の全菌数は定量下限(103 cells/mL)程度であったが、50 cmろ過水では104?105 cells/mLまで増加した。全菌数の増加は0?50 cm区間で最も大きく、BAC層全体での増加量の32?74%を占めていた。ろ過水中の微生物群集構造解析の結果、流入水と50cmろ過水では群集構造が大きく変化していた。ろ過水中の全菌数と各微生物群の相対割合を掛け合わせることで、深度方向における微生物群別の増加量を推定した。全菌数増加が顕著であった0?50 cm区間では、Rhizobiales目(BAC-A、BAC-B)、Burkholderiales目(BAC-C)、Sphingomonadales目(BAC-D)の増加が最大であり、表層の増殖・剥離の傾向には差異がみられた。なお、BAC-Bを除き、これらの微生物群の増加量は、50 cm以深では少なかった。BAC-A、B、Dでは0?50 cm区間とろ過層全体で増加が最大であった微生物群が一致していたが、BAC-Cではろ過層全体ではBdellovibrionales目の増加量が最大であり、表層以深での増加量も多いことが示唆された。このようにBACろ過層によって異なるろ過水中の微生物群集構造は、生物処理機構の差異を反映していると考えられる。
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