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演題詳細

P-019:
Chromobactrium violaceumはセンサーキナーゼを用いて多様な言語(AHL)に応答する
○島村 裕子1, 豊福 雅典1, 諸星 智広2, 池田 宰2, 野村 暢彦1 1筑波大・院生命環境, 2宇都宮大・院工
多くの細菌は集団中において,低分子化合物であるシグナル物質を「言葉」として細胞外に生産し,周囲の細菌が「聞く耳」となる特異的なレセプターを介してシグナル物質を受け取ることによりコミュニケーションをとる。細菌は細胞間コミュニケーションの一種であるクオラムセンシングというシステムにより,シグナル物質を生産,感知,応答し,シグナル物質の濃度が閾値に達すると,遺伝子発現そして集団行動を一斉に変化させる。クオラムセンシングは様々な遺伝子を制御し,細菌の毒素生産や医療現場などで問題となるバイオフィルム形成にも関与する。クオラムセンシングを行う際に重要であるのが,シグナル物質を感知することである。グラム陰性細菌では一般的に,アシル化ホモセリンラクトン(AHL)がシグナル物質として利用され,各シグナル物質に対し特異的なレセプターが対応する。グラム陰性細菌であるChromobacterium violaceum ATCC 12472株は側鎖の長さが異なる様々な長鎖AHLに応答するが,解明されているレセプターは細胞内のレセプターCviRのみである。そこで,本研究ではATCC 12472株がどのような機構で多様な言語(AHL)に応答するのか解析を行うことを目的とした。
その結果,新たに2つのセンサーキナーゼが多様なAHLの応答に関与することを示し,前大会ではそれがCviRを介してクオラムセンシングを制御する可能性までを報告した。本研究では,2つのセンサーキナーゼと二成分制御系の推定のペアであると考えられる2つのレスポンスレギュレーターについても解析した。一方のレスポンスレギュレーターを破壊すると応答性がセンサーキナーゼと同様に低下し,もう一方のレスポンスレギュレーターを破壊すると応答性が増加し,低濃度のAHL条件下においてもAHLを感知した。また,顕微鏡を用いて一細胞レベルで応答性を観察したところ,センサーキナーゼの破壊株ではほとんどの細胞で応答性が低下していた。これらの結果より,2つの推定の二成分制御系がAHLの応答,そしてクオラムセンシングの制御に関与していることが示唆された。C. violaceumはCviRだけでなくこれらの2つの二成分制御系を用いて,多様な言語(AHL)の“リスニング能力”を上げることで,環境適応していると考えられる。
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