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難培養性微生物Nitrospiraの増殖促進、休眠・覚醒現象の解明
○村上 千穂1, 金田一 智規1, 大橋 晶良1, 青井 議輝2
1広島大・院工, 2広島大・サステナセンター
環境中の多くの微生物は難培養性であることが知られている。その事実は微生物学において本質的に重要な課題であるにもかかわらず、なぜそれらが培養できないのか、つまり難培養性という性質についての本質的な理解は全く得られていない。一方で、門レベルで難培養性を示すNitrospiraは、亜硝酸酸化反応を主要に担う重要な微生物種であるにも関わらず、分離に成功した例は極めて少ないが、我々は新規な手法を適用することで、Nitrospiraの純粋菌株を獲得している。本研究では、難培養性微生物Nitrospiraをモデルとして用いて、難培養性微生物の増殖を制御する因子やメカニズムについて、微生物間相互作用および休眠・覚醒の観点から解明することを目的とした。 Nitrospiraは実際の環境中では自身の代謝産物を基質として増殖する従属栄養細菌と共存している。そこで、Nitrospiraと共存する従属栄養細菌を複数菌株単離し、Nitrospiraとの共培養を通じて亜硝酸酸化反応を促進する微生物をスクリーニングしたところ、実際に複数の菌種はNitrospiraの増殖を促進する活性を保持していた。一方で、Nitrospiraは自身の活性を阻害する物質を産出している現象を同時に確認できたことから、環境中では増殖阻害物質を共存する従属栄養細菌が分解・除去することでNitrospiraの増殖を促進していると考えられる。つまり、通常の分離培養条件(回分培養)では阻害物質が蓄積するためNitrospiraの培養を困難にしているのではないかと考えられた。 また、Nitrospiraは特定の条件で休眠状態に容易に陥り、特定の条件で覚醒することが判明し、さらに休眠状態のNitrospiraを覚醒させる未知因子の存在が示唆された。