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海洋プラスチックごみに付着していたポリ(3-ヒドロキシブタン酸)分解細菌の特徴付け
○滝澤 玲香, 鈴木 美和, 橘 熊野, 粕谷 健一
群馬大・院理工
【目的】プラスチック製品は現代の生活に必要不可欠なものである。一方で,廃棄物の環境汚染が問題となっており,海洋生物に被害をもたらす。これらの問題を解決するために生分解性プラスチックが注目されている。その中でもポリ(3-ヒドロキシブタン酸) (P(3HB))は,高い生分解性を有する材料として特に注目されている。今回海洋でのP(3HB)分解機構を理解するために海洋プラスチックごみからP(3HB)分解菌を単離し,特徴付けした。
【方法】海洋環境中から採取したプラスチックごみから,P(3HB)分解菌をクリアゾーン法により単離した。16S rDNA配列解析に基づき進化系統樹を作製し,単離株を同定した。単離株の菌体増殖およびクリアゾーン形成の至適温度,および至適塩濃度を調べた。また、単離株のP(3HB)フィルム分解能力を重量減少法により評価した。また、単離株の生理学的性質および生化学的性質をAPI 20NEおよびAPI ZYMを用いて調べた。
【成績】遺伝学的解析により,単離細菌OKF12株は,Nocardioides属細菌と近縁種であることが判明した。P(3HB)を分解するNocardioides属細菌は,初めての報告である。本株を走査型電子顕微鏡で撮影したところ,コリネ型細菌であることが判明した。本株はP(3HB)に加えて,PHBV培地上にクリアゾーンを形成した。本株は50℃以上では成長せず,30℃での菌体増殖およびクリアゾーン形成能が高かった。また,培地組成中のNaCl含有率1%で菌体増殖およびクリアゾーン形成能が最も高かった。しかし,液体培養での各種塩濃度の増殖速度定数は,0%が最も高く,さらに海水の塩濃度である3%でも増殖が確認できた。このことから本株は耐塩性細菌であると推定した。本株はP(3HB)フィルム分解能を有し,その分解速度は0.27 mg/cm2/dであった。また,API ZYMを用いた表現型分析により,本株はプロテアーゼ活性を有することがわかった。異なる炭素源を添加して本株を培養し,菌体増殖度と上清活性を測定した結果,P(3HB)およびR3HBでよく増殖した。また,P(3HB)存在下では,LB培地よりも貧栄養なミネラル培地の方が高いP(3HB)分解酵素活性を示した。このことから,P(3HB)分解酵素の発現はLB培地成分により抑制されることが示唆された。
【結論】本株は,海洋におけるプラスチックゴミに付着するP(3HB)分解菌として,実際の海洋中でのP(3HB)分解に重要な役割を果たすと考えられる。