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大腸菌由来アセチル-CoAカルボキシラーゼを用いたマロニル-CoAの増産
【目的】コエンザイムA(CoA)はアシル基のキャリアとして機能する補酵素で、パントテン酸から5段階の酵素反応で生合成される。初発反応を触媒するパントテン酸キナーゼ(CoaA)は鍵酵素となっており、Pseudomonas putida由来CoaA(PpCoaA)でEscherichia coliのCoA生合成経路が効率よく強化されることが、当研究室のこれまでの研究から明らかにされている。今回はCoA生合成経路を強化したE. coliの細胞内アセチル-CoAをアセチル-CoAカルボキシラーゼ(Acc)を用いて脂肪酸合成やポリケチド合成の基質となるマロニル-CoAへ変換することを試みた。
【方法】E. coliからプロモーター領域を含むAccの4つのサブユニット遺伝子(accABCD)をPCRで増幅し、単独あるいは複数組み合わせてpUC118を用いてAccの発現プラスミドを構築した。得られた各プラスミドをPpCoaA発現プラスミドと共にE. coli DH5αに形質転換し、5mM パントテン酸および2% グルコースを含むM9Y培地で30℃、24時間振とう培養した。形質転換体の細胞内アセチル-CoA、マロニル-CoA、およびCoAはアシル-CoAサイクリング法で定量した。
【結果および考察】pUC118にaccA、accBC、accABC、あるいはaccBCDを持つ形質転換体の生育はAcc遺伝子を保持しない対照菌とほぼ同じであったが、accDの形質転換体では生育が悪く、カルボキシルトランスフェラーゼ サブユニットであるaccADおよび全サブユットであるaccABCDの保持菌にいたっては全く生育しなかった。これらの現象は細胞内のAcc活性とアセチル-CoAレベルが関係していると考えられた。生育した形質転換体の細胞内CoAレベルを解析した結果、Accサブユニットの発現によるアセチル-CoAからマロニル-CoAの変換が観察された。マロニル-CoA/アセチル-CoAを比較すると、対照菌では0.776であったのに対し、accAでは1.27、accBCでは2.16、accDで1.04、accABCでは1.29、accBCDでは0.873となった。本研究から、PpCoaAによって増大した細胞内アセチル-CoAをマロニル-CoAへ変換するにはAccサブユニットの共発現は有効であることが示された。