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超微小バクテリアの純粋培養とそのゲノム解析
○中井 亮佑
1, 藤澤 貴智
1, 中村 保一
1, 西出 浩世
2, 内山 郁夫
2, 馬場 知哉
1, 豊田 敦
1, 藤山 秋佐夫
1, 長沼 毅
3, 仁木 宏典
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1遺伝研, 2基生研, 3広島大・生物圏
rnakai@nig.ac.jp
生物はどこまで小さくなれるのか?微生物(特に細菌)を研究対象とする場合、その最小サイズは本質的な問題といえる。発表者らは、孔径0.2マイクロメートルの除菌フィルターを用いて、野外で採取した試料をろ過し、そのろ液から超微小バクテリアを探索している。その結果として、国内河川水のろ液から終生を極小サイズ(大腸菌の細胞体積の約40分の1)で過ごす新属細菌Aurantimicrobium minutum を単離した。本細菌のゲノムサイズは約1.6 Mbと小さく、近縁グループのそれが3~4 Mbであることから、ゲノム縮小が生じていると思われる。事実、近縁ゲノムでは保存されている幾つかの遺伝子群がそのゲノム中には存在しない。また一方、サハラ砂漠産「砂れき」の懸濁ろ液からは、培養後の細胞サイズが10マイクロメートル以上にまで大きくなる新綱細菌Oligoflexus tunisiensis を純粋分離した。この細菌のゲノムは約7.5 Mbpと比較的大きく、ゲノム中には好気呼吸に関わる複数の末端酸化酵素や異化型硝酸呼吸(脱窒)に関連する酵素をコードする遺伝子が見いだされた。また、RND 型異物排出システムをコードする領域なども存在した。以上のように、これまで看過されてきた「ろ液」に存在する極微小生物がさまざまな代謝機能を有する可能性が示された。