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演題詳細

P-044:
セラミックス多孔体への乳酸菌付着性の評価
○田岡 洋介1, 境 健太郎2, 木之下 広幸3, 福山 華子2, 小林 太一2, 平野 惇2, 黒木 教明4, 黒木 美千代4, 木村 昭彦5 1宮崎大・農, 2宮崎大・地域連携センター, 3宮崎大・工, 4黒木建設(株), 5キムラ漬物宮崎工業(株) yousuketao@cc.miyazaki-u.ac.jp
宮崎県は平成25年度にフードビジネス振興構想を打ち出し、県内の豊富な素材の多様な加工・製造による付加価値の向上」を掲げている。本研究は、宮崎で生産の盛んな大根の糠漬けなどの漬物製品の高付加価値化を図るために、乳酸菌リッチな漬物容器の開発を目的とした。糠床より単一の炭素源を含んだ種々の寒天培地を用いて乳酸菌を分離した。分離株の16S rRNA遺伝子配列(500-600bp)を基にBlast検索を行ったところ、分離株はいずれもLactobacillus属と判明した。乳酸菌の付着に最適な陶器製の漬物容器を作成するため、POM樹脂の粘土への混合率を0-30%とし、異なる温度(1000℃、1100℃)で焼成させた陶器片を作成した。これらの陶器片を用いて、糠床由来のLactobacillus sp. GYP-74株の付着試験を行った。1/100 MRS培地に陶器片を浸漬させ、GYP-74株を同培地に添加した。27℃、45時間静置したのち、陶器片を細かく破砕、生理食塩水を用いて段階希釈列を作成し、MRS寒天培地上での生菌数を算出した。その結果、焼成温度1000℃と比較して、1100℃で作成した陶器片においてGYP-74株の付着率が高まることが分かった。作成した陶器片の細孔分布をポロシメーターにより測定したところ、粘度のみの陶器片では数μm以下の気孔が主として分布しており、POM樹脂を混合した陶器片では数μm~数百μm気孔が数多く分布していた。陶器片の結晶構造を解析するため、X線回析測定を行った。得られたX線回析パターンに対してICDDデータベース検索を行い、鉱物同定を行ったところ、1000℃と1100℃で焼成させた両セラミックにはQuarts及びHematiteを含有することが分かった。一方、1000℃ではMicroclineを、1100℃ではMulliteを特徴的に含有することが分かった。本研究により、乳酸菌を数多く付着させるための陶器片の作成、またその条件に関する基礎的知見を得ることができた。今後は、本技術を用いて実際に漬物容器を開発し、漬物発酵過程の微生物の動態並びに漬物成分の変動を調査することで、乳酸菌強化漬物容器の実用化を目指す。
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