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白神山地土壌から分離した好酸性新規放線菌の系統分類学的研究
1993年にユネスコの世界自然遺産として登録された白神山地はブナ原生林が広範に分布することで知られている。白神山地土壌にはAcidobacteria門細菌を始めとして未分離の細菌が豊富に生息することが我々のこれまでの研究でわかっている。今回は白神山地土壌から分離した好酸性の新規放線菌株について報告する。 2013年6月14日に青森県西目屋村の弘前大学附属白神自然観察園にて採取した土壌から貧栄養のPPM培地(pH4.5)用いて希釈平板法により細菌株の分離を行った。得られた細菌株の中から新規性の高い放線菌株SK-25を選択し、新規分類群として記載するために、生理学的・生化学的・形態学的・系統学的解析を行った。 SK-25株は白色不透明、円形、全縁で粘性のないコロニーを形成した。コロニーからの気菌糸の形成は確認されなかった。細胞は約1.0 μmの菌糸状で、菌糸から分岐した短枝の先端に胞子(1.0-2.0 μmの卵形)を形成した。グラム染色は陽性、カタラーゼ・オキシダーゼ活性は共に陽性、硝酸還元能は陰性であった。グルコース・セロビオース・デンプン・キシランなど、単糖から多糖までの幅広い糖質を増殖基質として利用した。生育可能なpH範囲は3.0~5.5(至適4.0)と好酸的であり、SK-25株は白神山地土壌の低いpH(4.1~4.9)に適応していることが考えられた。16S rRNA遺伝子配列に基づく分子系統解析により、SK-25株の最近縁種はThermomonosporaceae科のActinoallomurus coprocola(配列相同性93.0%)であるが、NJ/ML系統樹上ではActinoallomurus属で形成されるクラスタとは独立していることが示された。Actinoallomurusに所属する種は、気菌糸を形成し、生育pH条件として弱酸性を好むなど、SK-25株とは異なる特徴をもつ分類群である。以上の結果に基づきSK-25株を新規分類群として記載する予定である。