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演題詳細

P-052:
白神山地土壌から分離した新規Acidobacteria門細菌に関する研究
○工藤 千沙希, 松尾 平三, 殿内 暁夫 弘前大・院農
【背景・目的】Acidobacteria門細菌は土壌、鉱山廃液など様々な環境に普遍的に生息する極めて多様性の高い細菌グループで、白神山地土壌においてもAcidobacteria門細菌が優占している。しかし、Acidobacteria門細菌は分離例が少なく生態や機能などは不明なことが多い。我々は白神山地土壌から新規性の高い複数株のAcidobacteria門細菌の取得に成功しており、そのうちAcidobacteriaceae科に所属するSK-11株について系統分類学的研究を行ったので報告する。 【方法】分離源とした土壌の採取場所は弘前大学白神自然環境研究所付属白神自然観察園の尾根部で、地表面から約10 cmの深さの土壌(A層)を採取・処理した。土壌懸濁液を段階希釈し、同所の土壌の抽出液で調製した貧栄養培地(1/2GNS培地)により平板培養することで細菌分離株を得た。分離株のうちSK-11と命名した株をYNB液体培地または1/2GNS培地を用いて培養し諸解析を行った。分子系統解析は、16S rRNA遺伝子配列に基づいて行った。 【結果・考察】SK-11株はAcidobacteria門subdivision1のAcidobacteriaceae科に所属するAcidicapsa ligniAcidicapsa borealisとそれぞれ96.6%および96.5%の16S rRNA相同性を示し、NL/ML系統樹でも両種と同一のクラスターを形成した。SK-11株とA. ligniおよびA. borealisとの比較試験の結果、SK-11株は両種と比較して生育pH範囲が狭く、低濃度のNaClに感受性を示し、キシラン利用性が良好であるが、メレジトースやリボースを利用できないなどの生理・生化学的な差異が確認された。SK-11株の生育pH範囲はpH 4.0-5.5(至適pH 5.0)であり、分離源である白神自然観察園土壌のpH範囲(pH 4.1-4.9)と生理的に適応していることが示された。植物由来の糖質であるキシロース、セロビオース、マンノース、キシランの利用性が良好であることから、土壌中においてこれらの物質代謝に関与していることが考えられた。本研究の結果に基づき、SK-11株をAcidicapsa属の新種"Acidicapsa shirakamiensis sp.nov."と命名し提案する予定である。
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